最新記事

テロ組織

国際社会が見過ごしている残虐集団ボコ・ハラム

270人以上の女子生徒がさらわれた事件以降、忘れ去られたボコ・ハラムの危険

2014年9月25日(木)17時00分
フィリップ・ロス

少女たちはどこへ 「人さらいはもうたくさん」というポスターを掲げる女性 Akintunde Akinleye-Reuters

 彼らは今年前半だけで2000人以上の民間人を殺害し、100件近くの戦闘を仕掛け、数百万人規模の避難民を生み出し、多数の女子生徒を人身売買目的で拉致した。それでも欧米諸国は、このナイジェリアのイスラム過激派組織、ボコ・ハラムの脅威を見過ごしているようだ。

 270人以上の女子生徒がボコ・ハラムに誘拐される事件が発生した4月以降、国際社会では介入を求める声が高まり、SNS上では救出運動も広がった。にもかかわらず、彼らは苦もなく猛威を振るい続けている。

 英米を含む外国政府はボコ・ハラムの捜索に当たるナイジェリア軍に軍事支援を行っているが、ほとんど効果を挙げていない。ナイジェリア軍はここ数週間で何度か掃討作戦を実施しているものの、ボコ・ハラムは学校や大学への襲撃を続けている。

 それなのに国際社会でボコ・ハラムが脇に押しやられているのは、地理的な悪条件やSNS上のキャンペーンの失敗、さらにはスンニ派テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)のイラク侵攻など他の地域で紛争が持ち上がっていることが理由だと、専門家は指摘する。

 ボコ・ハラムが拠点を構え、少女たちが監禁されているとみられるボルノ州サンビサの広大な森林地帯では、監視用無人機も役に立たない。政府の影響力が及ばない僻地であるため、掃討作戦は困難を極める。

 著名人を巻き込んでツイッター上で「#BringBackOurGirls(少女たちを取り戻せ)」として広がった運動も、成果はなし。むしろ、事件に世界の目を向けさせたことで、ボコ・ハラムを「世界的影響力を持つテロリスト」として肯定してしまった。

 米当局者らは、ボコ・ハラムをISISと同レベルの脅威とは考えていないと明言している。だからといってボコ・ハラムを過小評価してはいけないと、ナイジェリアの人権派弁護士エマニュエル・オゲベは米NBCニュースに語った。「彼らの活動でナイジェリア北東部は大混乱に陥り、さらにより広い地域が不安定化しつつある」と言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米AI開発企業首脳、半導体の輸出促進必要と主張 上

ワールド

米、1カ月で数十件の貿易協定目指す 中国と緊張緩和

ワールド

北朝鮮の金総書記、8日ミサイル実験を監督 核態勢を

ワールド

トランプ大統領、下院議長に富裕層への課税強化求める
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 7
    あのアメリカで「車を持たない」選択がトレンドに …
  • 8
    日本の「治安神話」崩壊...犯罪増加と「生き甲斐」ブ…
  • 9
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 10
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 8
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 9
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 10
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中