最新記事

ロシア

プーチンが加速させる「アジア重視戦略」

ウクライナ危機をめぐる欧米の制裁に対抗?ロシアがもくろむ「リバランス」の真の標的とは

2014年5月12日(月)12時14分
ザカリー・ケック

新たな活路 アジア太平洋地域の経済統合を目指すプーチン Alexei Druzhinin-RIA Novosti-Kremlin-Reuters

 4月15日、ロシア政府のウェブサイトに次のような文書が掲載された。「ロシア連邦大統領の指示により、ウラジオストクに工業生産特別経済区を創設し、産業インフラ整備に資金を提供する」

 ロシアはアジア太平洋地域の経済統合を目指している。今回の経済特区創設もその一環だ。

 ウラジオストクはロシア極東の主要都市で、中国や北朝鮮との国境に近い。極東沿海地方における最大の港にして、ロシア海軍の太平洋艦隊の母港。同時にロシア経済の主要なハブとしてアジア太平洋地域との経済関係強化にも貢献している。

 報道によれば、ロシアの経済特区は現在28カ所。内訳を見ると「工業生産特区6カ所、技術導入特区5カ所、観光レクリエーション特区14カ所、港湾特区3カ所」だ。「入居企業は税制上の優遇措置、輸送・社会・通関関連などの近代的インフラ、関税や付加価値税の免除、行政手続きの簡素化、優秀な人材の確保、入居手続きの簡素化などの恩恵にあずかれる」という。

積極外交で各国と関係強化

 ウクライナ危機で欧米との関係が揺らいでいる今、ロシアは「アジア重視政策(リバランス)」を加速させている。2月には極東開発を統括する極東発展省の権限を拡大。4月にはインドとの間で、原発事故が起きた場合の賠償責任をめぐって難航していた原発建設計画が合意にこぎ着け、インドのシン外務次官もロシアを訪れた。インドはクリミアの危機に関してはロシアの言い分を大方支持している。

 北方領土問題を抱える日本とも昨年、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を実施。3月には両国間の投資促進策を官民で話し合うフォーラムが開催されている。

 3月にはガルシカ極東発展相が北朝鮮を訪問した。北朝鮮とロシアは北朝鮮南部の開城工業団地へのロシア企業の進出を協議しているという。

 マレーシアとの経済協力強化も目指し、近々スホーイSu30戦闘機の納入も発表される見込みだ。マレーシアはロシアから防空ミサイルシステムを購入することにも関心を示している。

 ラブロフは4月にベトナムも訪れ、サン国家主席と会談。両国の包括的戦略的パートナーシップを再確認し、エネルギー貿易を特に重視することで合意した。ベトナムとの間では、ロシア・ベラルーシ・カザフスタンが加盟する関税同盟との自由貿易協定(FTA)交渉も進んでいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米FDA、ノボの肥満治療薬「ウゴービ」経口錠を承認

ビジネス

午前のドルは156円前半に下落、利食いなどで 介入

ビジネス

独ポルシェ、中国のEV充電インフラ運用終了へ 来年

ビジネス

JPモルガン、機関投資家向け仮想通貨取引サービス検
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中