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海賊版大国、中国は旅客機までコピー?

2014年3月17日(月)11時51分
ヒュー・ギャラガー

 ロシアもステルス戦闘機を独自に開発しているが、中国はその技術も盗み取った。中国は96年、共産主義の崩壊と財政難でがんじがらめになっていたロシアとある取引をした。25億ドルをロシアに支払って、戦闘機Su27をライセンス生産する契約を結んだのだ。

 中国版Su27は殲11と名付けられたが、そこで行われたのが露骨な盗みだ。「契約が結ばれた時点で、中国がやることはみんな分かっていた」と、ロシア人の中国軍事専門家、ワシリー・カシンはウォール・ストリート・ジャーナルに語った。「だが危険を冒すしかなかった。当時は、生き残れるかどうかの瀬戸際だった」

 中国は殲11を100機ほど生産してから、04年に契約を解除。ロシア側には、この機種は基準に合わなくなったと通告した。機体の隅々まで研究し尽くしたからだろう。3年後、中国はSu27とそっくりの戦闘機を発表。そのコピー戦闘機を国際市場で、ロシア製より1000万ドルも安い価格で販売する。これが中国のやり口だ。

 エジプトやパキスタンのような特売品をあさる国には朗報だろう。だが、購入を検討中の国は注意したほうがいい。問題のあるモデルは、ロシア軍の戦闘機を分解し、コピーして造り上げたMA60。中国が初めて国際市場で売り出した旅客機だ。

 中国国内でMA60が販売されなかったのは、墜落事故があまりにも多かったからだ。中国の航空会社からそっぽを向かれて、コピー旅客機の在庫を抱えた中国航空工業集団公司は売り急いだ。第三世界の親愛なる同盟国に売り付けたのだ。

 2機を購入してくれたジンバブエ航空には、もう1機をおまけで付けた。大幅な値引きや低金利ローンで販売されたMA60は、相手国に対する政治的便宜の一部とされた。

 13年にはトンガ国王へ無償供与され、盛大な式典も行われた。だがMA60の評判はあまりにも悪く、ニュージーランドが安全性への懸念を理由にトンガの観光計画に対する援助を停止する、という事態にもなった。

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