最新記事

中東

アメリカをシリア介入に駆り立てる男

米政権が内戦終結の道筋を探るなか、シリアを急きょ訪れたマケイン米上院議員はアメリカ主導の介入を主張

2013年5月28日(火)16時53分
タリア・ラルフ

行動派 米議員の中でもオバマ政権の対シリア政策に批判的なマケイン Kevin Lamarque-Reuters

 2年間で死者8万人を超え、尚も内戦が続くシリアを昨日、思いがけない人物が電撃訪問した。アメリカのジョン・マケイン上院議員(共和党)だ。

 08年の米大統領選で共和党候補にもなったマケインほどの大物政治家がシリアを訪れるのは、血みどろの内戦が始まって以来初めて。マケインは反体制派の最高軍事評議会司令官サレム・イドリスとともにトルコ経由でシリア入りし、4時間近く反体制派の指導者たちと面会した。

 デイリー・ビーストの報道によれば、反体制派の指導者たちはマケインに対し、さらなる支援を米政府に促すよう要求。殺傷力のある兵器の供給や飛行禁止区域の設定、シリア政府軍やイスラム教シーア派武装組織ヒズボラへの空爆を求めた。

「このタイミングでのマケイン上院議員の訪問は、非常に重要で有益なものだ」と、イドリスは語った。「戦況を変えるにはアメリカの助けが必要だ。私たちは今、極めて危機的な状況にある」

 マケインは議員たちの中でもひときわアサド政権に批判的で、昨年3月にはアメリカ主導で国際社会がシリア政府軍への空爆に踏み切るべきだと訴えた。今月初めにもタイム誌に寄稿し、シリアへの介入の意義を論じている。

「行動しないことの代償が、行動することの代償より重くなるか?」と、マケインは記している。「過去2年2カ月の間に起きたことを考えれば、答えは間違いなくイエスだ。介入が招くさまざまな悪影響として反対派が想定していたことがすべて、実際は介入しなかったせいで起きてしまった」

 オバマ政権はシリア向けの人道支援を強化し、アサド政権を公に批判しているものの、反体制派への軍事援助は控えている。

 マケインの電撃訪問と時を同じくして、パリではケリー米国務長官とロシアのラブロフ外相が会談した。両国は今月初め、シリアのアサド政権と反体制勢力を一堂に集めて内戦終結の筋道を探る国際会合の開催を目指すことに合意しており、今回もその実現をめぐり協議したが、ラブロフは会談後、「開催は難題だ」と語ったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中