最新記事

異説

アメリカの医療保険制度は最高だ!

2009年8月4日(火)18時06分
ジョナサン・オルター(本誌コラムニスト)

議論を始めてからまだたった97年

 現状のうちでも最高なのは、医者がサービス単位で支払いを受ける仕組みだ。医者は、処置の一つ一つに対して支払いを受ける。自動車販売員が、車を売った対価ではなく、ハンドルを握ったりブレーキを踏んだりするたびにコミッションを受け取るようなものだ。近所のショッピングセンターで開業しているクリニックの医療のほうが、医者が給与ベースで働いているメイヨー・クリニックやスローン・ケタリング記念癌センターなどの大病院よりはるかに優れているのもそのおかげだ。誰がこのシステムを壊したがるだろうか。

 よろしい、認めよう。私も本音では変化を望んでいる。自分たちも「改革者」だと言うために共和党議員が持ち出した政策を、私は支持する。彼らによれば、医療過誤訴訟で認める損賠賠償支払い額に上限さえ設ければ、医療保険制度全体を救うことができる。カリフォルニア州とテキサス州という全米最大の2つの州が数年前にその通りのことを実施したが、何も良くならなかった。だが、誰がそんなことを気にするだろう。何より、この政策は聞こえがいい。

 だから、米議会が夏休みになって地元の議員が帰ってきたら、医療保険改革はまだ時期尚早だと訴えよう。何せ、私たちがこの議論を始めてからまだ97年しか経っていない。1912年にセオドア・ルーズベルトが革新党の選挙公約に公的医療保険を掲げたのが最初だからだ。議会の公聴会もたった745回しか開かれていない(ちゃんと数えたわけではないが)。こんなものではとても足りない。何かをする前に、もっとこの問題を研究しよう。

 たった今、私は「問題」と言ったか? 問題など何もない。私は現状維持が好きなのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中