新石器時代の交易は「アフリカが主導」していた...モロッコの遺跡が示す「重大な証拠」とは?
Unknown Stone Age Farming Society Discovered in Africa

川を見下ろす尾根に位置するウエド・ベート遺跡(カラー部分) TOBY WILKINSON/ANTIQUITY PUBLICATIONS LTD
<ジブラルタル海峡を挟んで向かい合うアフリカとヨーロッパの間では、新石器時代から交流があったようだ──>
モロッコ北部のウエド・ベート遺跡(Oued Beht)で、新石器時代の農耕社会の存在が判明した。昨年10月に発表された研究によれば、ナイル川流域以外ではアフリカで「最古で最大」で、紀元前3400~2900年ごろのものだという。
【動画】新石器時代の交易は「アフリカが主導」していた...モロッコのウエド・ベート遺跡の集落跡
現地調査をしたのは、英ケンブリッジ大学のシプリアン・ブルードバンク教授(Cyprian Broodbank、考古学)が率いる国際研究チームだ。
この数年間、表土調査やマッピング目的のドローン(無人機)画像調査を実施。発見された約10ヘクタールの集落跡からは土器や石器、前例のない栽培植物や家畜の痕跡が出土し、多くの深い貯蔵穴があったことも分かった。
注目すべきことに、モロッコとジブラルタル海峡を挟んで向かい合うイベリア半島では、同様の貯蔵穴を備えた同時代の遺跡が既に確認されている。
「スペインやポルトガルの南部にある同規模の遺跡や出土品の彩色土器と強い類似性があり、初期の海上交流を示唆している」と、研究者らは指摘する。「その一部はほぼ間違いなく、アフリカ側が主導していた」
<参考文献>
Broodbank C, Lucarini G, Bokbot Y, et al. Oued Beht, Morocco: a complex early farming society in north-west Africa and its implications for western Mediterranean interaction during later prehistory. Antiquity. 2024;98(401):1199-1218. doi:10.15184/aqy.2024.101