最新記事
メンタルヘルス

チャットGPTのセラピーで悩みがスッキリ解消?

Using ChatGPT for Therapy

2024年9月11日(水)12時48分
メリッサ・アフシャー
AIセラピーの画面(イメージ)

気軽に相談できるAIボットは賢く使えば役立つが、頼りすぎると思わぬ落とし穴が NICO EL NINO/ISTOCK

<ほぼ無料でいつでも利用できる「お手軽心理療法」のプチブームに専門家が警鐘>

猛スピードで進化を遂げ、身近な技術となったAI(人工知能)。文書や画像の作成、企画立案などには大いに役立つが、感情の機微に触れる心理療法には不向きとされる。

ところがチャットGPTなどAI搭載型チャットボットに心の悩みを相談する「お手軽セラピー」が若年層を中心に話題を呼び、その方法を伝授する動画がTikTok(ティックトック)などに盛んに投稿されている。こうした風潮に対し、専門家は安全性に疑問ありと注意を促す。


コンテンツクリエーターのシャノン・マクナマラは心理療法ツールとしてチャットGPTをよく使っていると、本誌に話した。「独りで考えてもらちが明かないときや自分の気持ちがよく分からないとき」などに「驚くほど役立つ」そうだ。個人的な事柄を詳細に入力すればプライバシー保護上のリスクがあるのは承知の上だが、利用のメリットがリスクを上回るという。

マクナマラは多くの人にその効果を知ってもらおうと、今年7月末からTikTokで活用術を配信し始めた。

メンタルヘルスの不調に苦しむ人は多いが、心理療法を受けるハードルは高い。アメリカでは昨年の相場で1回の料金が100〜200ドル前後。特に若年層にとっては痛い出費になる。それに比べ、年中無休で1日24時間、無料か低料金で利用できるAIツールは魅力的な代替手段に見える。

だが手軽な手段に頼りすぎるのは考えものだ。「セラピー代わりにAIを使っても、本物のセラピーのような効果は期待できない」と、心理療法士のレーチェル・ゴールドバーグは警告する。治療がうまくいくためにはセラピストとクライアントの信頼関係が非常に重要、というのだ。

限界を知って有効活用

AIプラットフォームを通じて認知行動療法ツールを提供するアプリ「ヨディ」を開発したセス・アイゼンバーグも同じ考えだ。

「175カ国・地域の20万人以上のユーザーがヨディをダウンロードしたことからも、必要なときに即座にアクセスできる感情面の支援ツールを多くの人が求めているのは明らかだ」と、アイゼンバーグは言う。一方で、人間のセラピストとの対話から生まれる深い感情的なつながりや共感は、AIには期待できない、ともクギを刺す。

大規模言語モデルでテキストを作成する生成AIは、ユーザーの質問に対し文脈に沿った回答をする。だが入力情報が不十分であれば、不正確な情報やでっち上げの情報を提示することもある。しぐさや表情からユーザーの気持ちを読み取ることができないのもAIの限界だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米関税で見通し引き下げ、基調物価の2%到達も後ずれ

ワールド

パレスチナ支持の学生、米地裁判事が保釈命令 「赤狩

ワールド

イラン、欧州3カ国と2日にローマで会談へ 米との核

ワールド

豪総選挙、与党が政権維持の公算 トランプ政策に懸念
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中