「できないことはみんなで」 丸紅ケミックス×34社が廃棄物から新素材をつくる理由

環境配慮型素材「ePlas」の主原料となるセルロースパウダー
<「捨てるはずのもの」を混ぜて価値に変える――丸紅ケミックス主導の「Do What We Can」は、異業種の技術を束ね、循環とコスト・品質の両立を狙う共創プロジェクトだ>
日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。
私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
日本におけるプラスチック使用量は、近年の削減傾向から再び増加に転じ始めている。
こうした中、丸紅ケミックス株式会社(以下、丸紅ケミックス)は、34社から成るコンソーシアム「Do What We Can」を設立し、廃棄物や残渣を活用してプラスチック使用量の抑制を目指した新素材の共同開発に乗り出した。
丸紅ケミックスは、丸紅グループの化学品・樹脂領域を担う専門商社である。合成樹脂、基礎化学品、電子材料の調達・販売に加え、配合・加工、技術提案まで一気通貫で提供する。近年はバイオ由来素材やデジタル技術の導入などサステナビリティ分野も強化している。
その事業基盤のもと、同社は2023年に環境配慮型素材「ePlas(エプラス)」を開発した。
非プラスチック素材(セルロースパウダーまたはもみ殻炭)51%とプラスチック49%で設計し、容器メーカーなどの環境対応ニーズに応える素材として注目されている。化学商社としての強みを生かし、持続可能な未来に向けた取り組みを加速している。
技術の壁が生んだ共創の必然
丸紅ケミックスは、「ePlas」での知見を土台に、未活用の廃棄物・残渣(卵殻、牡蠣殻、間伐材、製造端材など)をプラスチックと混練(素材を均一に混ぜ合わせる工程)して新素材化する挑戦に踏み込んだ。この発想の実現には三つの技術的ハードルがある。
第一に、廃棄物・残渣を乾燥・粉砕し、混合可能な状態に整える前処理。第二に、プラスチックとの均一な混練。第三に混合素材を用途に応じて成形する工程という点だ。これらを一貫して担える企業は限られるため、単独対応には限界があった。
そこで同社は、グループスローガン「できないことはみんなでやろう」に基づき共創型プラットフォームの構築に舵を切り、2025年3月5日にコンソーシアム「Do What We Can」を設立した。