分かり合えなかったあの兄を、一刻も早く持ち運べるサイズにしてしまおう...映画化が決まった実話

憎かった兄が死んだ(画像はイメージです):shutterstock/GARAGE38
<肉親だからこそ難しい関係...というものがある。警察署からの報せで兄の死を知った人気エッセイストの5日間>
実際にその日がやってきたとき、こじれた肉親との関係をどのように終えばよいのか。エッセイストで翻訳家の村井理子氏は、長年、不仲だった兄を亡くした。突然の病死だった。兄を弔い、身辺を片付け、感情を整理していく。その過程を綴ったベストセラー『兄の終い』(CEメディアハウス)より、プロローグを紹介する。
※本書が原作の映画『兄を持ち運べるサイズに』(出演:柴咲コウ、オダギリジョー、満島ひかり 他/脚本・監督:中野量太[『浅田家!』])は、11月28日(金)全国公開。
塩釜警察署からの1本の電話
「夜分遅く大変申しわけありませんが、村井さんの携帯電話でしょうか?」と、まったく覚えのない、若い男性の声が聞こえてきた。
戸惑いながらそうだと答えると、声の主は軽く咳払いをして呼吸を整え、ゆっくりと、そして静かに、「わたくし、宮城県警塩釜警察署刑事第一課の山下と申します。実は、お兄様のご遺体が本日午後、多賀城市内にて発見されました。今から少しお話をさせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」と言った。