最新記事
医療機器

ビタミン錠剤大のカプセルを飲んで眠るだけで、手軽に正確に呼吸数と心拍数が計測できる

SLEEP APNEA PILL

2024年9月20日(金)15時47分
イアン・ランダル
ビタミン錠剤大のカプセルを飲んで眠るだけで、手軽に正確に呼吸数と心拍数が計測できる

カプセル型センサーの診断は「手軽」で「正確」だと請け合うトラバーソ COURTESY OF THE RESEARCHERS

<胃の中で呼吸と心拍を計測するカプセル型センサーの登場で検査がぐっと簡単に。ビタミン剤を飲む感覚で睡眠障害を突き止める>

ビタミン剤くらいの大きさの電子カプセルを飲み込むだけで、睡眠時無呼吸症候群など睡眠障害の検査ができる日が来るかもしれない。

米マサチューセッツ工科大学(MIT)が中心となって開発したカプセル型センサーは、加速度計を使って胃の中から呼吸数と心拍数を測る。データは、内蔵の無線アンテナによってノートパソコンなどのデバイスに送信される。


就寝中に呼吸が何度も止まったり再開したりするのが、睡眠時無呼吸症候群。そのたびに覚醒してしまうため、睡眠の質が低下する。だが今のところ本格的な診断には、検査入院が必要だ。

カプセル型センサーが実用化されれば、自宅のベッドで寝ているうちに検査が終わるかもしれない。アイマスクの使用やCPAP療法(経鼻式持続的陽圧呼吸法)といった治療の効果を確認するときにも、センサーが役に立つ。

研究を主導するのはMITのジオバニ・トラバーソ准教授(機械工学、消化器学)。「ビタミン錠剤大のカプセルを飲んで眠るだけで、手軽に正確に呼吸数と心拍数が計測できる」と、彼は言う。

研究チームは過去に炎症性腸疾患などを調べる経口カプセル型センサーを開発しており、これが今回の研究の基礎になった。「心臓や肺に近いため、胃は概して最高のシグナルを発信してくれる」と、トラバーソは声明で述べた。

将来は投薬機能も搭載

チームはまずブタで実験し、呼吸数と心拍数を計測できることを確認した。その後10人の被験者で臨床試験を実施すると、センサーはバイタルサインを正確にモニタリングし、1人について睡眠時無呼吸症候群の症状を検出した。

副作用はなく、10人全てのケースでカプセルが消化管を無事通過したことが後日、エックス線画像で確認された。

だがこのサイズのカプセルは、約1日で体外に排出されてしまうのが難点。現在チームは胃と小腸をつなぐ幽門の手前でカプセルを止める方法を探っている。1週間程度胃にとどまらせ、睡眠時無呼吸症候群の進行度や不整脈の一種である発作性心房細動の有無を診断するのが狙いだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

UAE、イエメンから部隊撤収へ 分離派巡りサウジと

ビジネス

養命酒、非公開化巡る米KKRへの優先交渉権失効 筆

ビジネス

アングル:米株市場は「個人投資家の黄金時代」に、資

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック小幅続落、メタが高
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中