最新記事
ヘルス

血糖値が急上昇する食事が「血管と全身の老化」をもたらす 炭水化物大好き人間を待つ「恐怖の結末」

2023年9月22日(金)14時25分
池谷敏郎(池谷医院院長、医学博士) *PRESIDENT Onlineからの転載

とくに患者数が増加しているのが「心不全」です。心不全は医学的には病名ではなく、十分な血液を全身に送れなくなっている状態を指しています。

しかし日本循環器学会および日本心不全学会は、2017年に「心不全の定義」として、「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と発表しました。心臓が悪いことを総合的に表現する言葉として、あえて「病気」と表現したのです。

「心不全パンデミック」のリスク

「がん患者100万人時代」という言葉を聞いたことがある方もいると思います。しかし日本における心不全の患者数は、2020年時点ですでに約120万人と推定されており、がん患者数を超えています。

近年、医療関係者の間では、心不全患者数の急増を、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症のパンデミックになぞらえて「心不全パンデミック」と呼び、不安視されているくらいなのです。

心不全が起こる主な要因には、高血圧や心筋梗塞などがあります。粥状動脈硬化が冠動脈(心臓に血液を送る血管)に発生すると、心筋に十分な血液量を送れなくなり、心筋が酸欠状態に陥(おちい)って、命に危険が及ぶことになります。

心不全は死亡率と再入院率が高く、がんの「5年生存率」が約70%であるのに対して、心不全は約50%と、がんよりも低いのです。

血管にダメージを与える「サビ」と「コゲ」

私たちの血管にダメージを与え、老化させる「原因」についてさらに詳しく見ていきましょう。

体を老化させる主な要因は「酸化」です。また、「糖化は老化」という言葉があるように、「糖化」は私たちの体の細胞を酸化して障害することがわかっています。

「紫外線による酸化から肌を守る」とか、「糖化から体を守るエイジング対策」など、化粧品やサプリメントのキャッチフレーズで、みなさんにとってもお馴染みの言葉かもしれません。

サビ=酸化、コゲ=糖化

酸化は、古くなった自転車などにつく「サビ」を、糖化は、魚を焼きすぎたときなどにできる「コゲ」をイメージするとわかりやすいと思います。

サビは自転車のスムーズな動きを妨(さまた)げ、コゲは魚のおいしさや栄養を損ないますが、サビとコゲは、私たちの体をつくる細胞にとっても同様の害をもたらします(コゲはがんの原因にもなるといわれています)。

そして、血管内で生じるサビやコゲが動脈硬化を進め、全身の老化を早めてしまうのです。

「血糖値の上昇」が悪さをする

問題は、どうなると体の中にサビやコゲが発生してしまうのか、ということです。血管内のサビやコゲの発生に深く関与しているのが「血糖値」の上昇です。

血糖値とは、「血液中に含まれるブドウ糖の濃度」を示すものですが、最近はダイエット関連用語として、広く知られるようになりました。

編集部よりお知らせ
ニュースの「その先」を、あなたに...ニューズウィーク日本版、noteで定期購読を開始
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ISS、コアウィーブによる90億ドル規模の買収計

ワールド

アラスカLNG事業、年内に費用概算完了=米内務長官

ワールド

アングル:高市政権、日銀との「距離感」に変化も 政

ワールド

世界安全保障は戦後最も脆弱、戦わず新秩序に適応をと
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 7
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 10
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中