松本清張はなぜ「昭和の国民作家」に上り詰めたのか?...幼少期のエピソード・恋愛関係など、新資料が明かす「本格評伝」
第3章では清張が小倉の高等小学校を卒業し、給仕を経て見習いの印刷画工となった青年期に光を当てる。第4章では清張が結婚し、朝日新聞西部本社に雇用され、兵卒として朝鮮半島で従軍した経験について述べる。本書では清張の恋愛経験や戦争体験についても、踏み込んだ記述を行う。
第5章では「西郷札」でデビューした後、「或る「小倉日記」伝」(1952年)で芥川賞を獲得し、『点と線』(1958年)や『眼の壁』(1958年)、『ゼロの焦点』(1959年)などのヒット作を次々と世に送り出し、人気作家となったプロセスを明らかにする。
第6章では、清張が所得で他の作家を圧倒し、60代、70代に入っても、長者番付の作家部門で上位に名を連ね、「昭和の国民作家」として人気を博した秘訣に迫る。新潮文庫に収録された清張作品の最新の発行部数や、各時代の清張の所得など、詳しいデータも示す。
この本では従来の清張に関する著作でほとんど言及されてこなかった幼少期のエピソードや、思春期以後の恋愛関係についても、詳細に述べている。清張の人生について、彼自身も書いていないことも含めて記述した、初めての「本格評伝」である。
貧しい家庭に生まれ育ち、高等小学校卒の学歴で給仕となり、印刷画工を経て大作家になった松本清張が体現した「どこまでも前向きな生き方」と、それを育んだ「昭和という時代の力」に注目していただければ幸いである。
酒井 信(Makoto Sakai)
1977年、長崎市生まれ。明治大学准教授。早稲田大学卒業後、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。慶應義塾大学助教などを経て現職。専門は文芸批評・メディア文化論。著書に『松本清張はよみがえる』『現代文学風土記』(以上、西日本新聞社)、『吉田修一論』(左右社)、近著に『吉田修一と『国宝』の世界』(朝日新聞出版)などがある。
『松本清張の昭和』
酒井 信[著]
講談社[刊]
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