最新記事
坂本龍一

「YMO第4の男」松武秀樹が語る、坂本龍一『千のナイフ』制作秘話

A GROOVE MASTER PASSES AWAY

2023年4月12日(水)13時20分
澤田知洋(本誌記者)

――YMO後期は坂本さんと細野さんの仲が悪かった?

勘違いされている部分が多いけど、仲が悪かったわけではない。あんなに売れたくはなかったと3人ともよくおっしゃっていた。もっと自分たちの個性のある音楽を作りたいけど、レコード会社が決めた発売日にアルバムを出さなければいけないジレンマがあった。そこですれ違いが起きたのだと思う。そのジレンマが形になり「ライディーン」みたいな曲はもうやらない、とファンを裏切るようなアルバムにしたのが『BGM』とその後の『テクノデリック』だと思っている。YMOのサウンドはテクノデリックで完成されたと思う。

――坂本さんの音楽的功績とは。

「無国籍」な音楽を作った点にあるのでは。もちろん東洋的なペンタトニック(5音音階)を使った曲もあるけど、ジャズやフュージョン、土着的なメロディーなんかが坂本さんの頭の中で整理整頓されて、僕らが予測できない展開がされていた。坂本さんの曲のコード進行はすごいと思う。テクノは基本的に簡単明瞭で、例えば使うコードはドミソのような3和音が多い。YMOの曲は3人ともテンションコード(複雑なコード)だらけで、特に坂本さんの曲は発想の出どころが分からなかった。

――最後に坂本さんに会ったのは?

まだ癌罹患を発表する前、東日本大震災後に結成され、坂本さんが音楽監督を務めた東北ユースオーケストラのリハーサルを僕が訪ねたときだったかな。「元気で、ずっといい音楽を作ってね」と声をかけると「ありがとう」と笑っていた。同じ年齢で同学年、同じ時代を生きてきた者としては、もう少し生きていてほしかった。もう一回いろいろ話したかったな、と悔いが残る。

【関連記事】坂本龍一と走り続けた40年──音楽業界の重鎮だけが見た天才の素顔

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中