最新記事

テレビ

新ドラマが描くバニーガール黄金期の嘘

米NBCテレビのドラマ『プレイボーイ・クラブ』はでたらめのオンパレード

2011年11月21日(月)12時46分
ノーラ・エフロン(脚本家)

偽りの輝き プレイボーイ誌を生んだヘフナー(左前)を囲むバニーガールたちは、薄給のウエートレスでしかなかった(1960年、シカゴ) Slim Aarons/Getty Images

 ヒュー・ヘフナーという人物がまだ消えていないことを、私はずっと不思議に思っている。プレイボーイ誌を創刊し、プレイボーイ帝国を築いたへフナーはなぜ今も注目され、なぜそのご託宣がメディアに取り上げられるのだろう。

 雑誌にプレイボーイ・クラブ、車のバンパーステッカーにTシャツ......。彼がつくったものはとっくに20世紀の中古品ショップに放り込まれた。プレイボーイ社の株価はがた落ちし、雑誌の発行部数は減り、クラブのチェーン店は次々に閉鎖された。

 しかしヘフナー自身は、モグラたたきのモグラのように何度たたかれても顔を出す。85歳の今も、自分のパジャマやバイアグラのこと、取り巻きの整形美女たちのことをインタビューで語る。なぜそんな話に人が、あるいは私が興味を持つのか、まったく不可解だ。

 昨年、彼が3度目の結婚をするというニュースがメディアを騒がせたとき、私は彼の25歳の婚約者クリスタル・ハリスが婚約を破棄してくれないかと願い、人生を30秒無駄にした。

古き良き60年代のシカゴが舞台

 すると後に、彼女は本当に破棄した。やるじゃんクリスタル! と喜んだのもつかの間、彼女はテレビで自分から破談にしたわけではないと語り、私を失望させた。「ヘフと2人で決めた」のだという。

 こんなことを書いているのは、NBCテレビで新ドラマ『プレイボーイ・クラブ』が始まったからだ。

『マッドメン』の人気にあやかろうと、ドラマの時代設定は60年代初め。フェミニズム運動がすべてをぶち壊すより少し前の「黄金時代」を描くという趣向だ。登場するのはバニーガール、野心家のシカゴの弁護士、マフィア......。

 初回を見た限りは初期のプレイボーイ誌のようだ。面白い部分はあるが、ストーリーは二の次で、要は女性の胸を見せたいだけ。もっともNBCのドラマとあって、胸は古風なブラに収まるか、バニーガールの衣装の下に「寄せて上げて」ある。

 ヘフナー自身は登場しないが、ゾクゾクするようないやらしい声の語りが入る。「この世界でなりたい自分になれる女性」はバニーガールだけだと、彼はのたまうのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、2カ

ワールド

米・ウクライナ鉱物協定「完全な経済協力」、対ロ交渉

ビジネス

トムソン・ロイター、25年ガイダンスを再確認 第1

ワールド

3日に予定の米イラン第4回核協議、来週まで延期の公
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中