最新記事

海外ノンフィクションの世界

パーソナル・コーチングの父が最も伝えたいことは「セルフィッシュになれ」

2020年4月13日(月)17時35分
糟野桃代 ※編集・企画:トランネット

Mediaphotos-iStock.

<市場規模150億ドルとも言われる米コーチング業界の礎を築いたトマス・J・レナードからの、自己実現のための意外なメッセージ>

「コーチング」という言葉は、馬車(coach)、つまり「大切な人を、その人が現在いる場所から、望む目的地まで送り届ける手段」というところに起源があると言われる。

クライアントが、コーチとの双方向のコミュニケーションを通して気づきを得て、主体的に行動を起こし、問題解決やスキルの獲得など、欲しい結果を達成していく。コーチはクライアントに答えを教えるのではなく、クライアントならではの正解を引き出すことで、可能性を開花させていく。

こうしたコーチングの手法は、スポーツ、教育の世界から、ビジネスにおける人材開発、個人の自己実現へと広がってきた。アメリカでは市場規模は150億ドル(1.61兆円)を超えるという調査結果もあり、今後も成長が見込まれているコーチング業界――その礎を築いたとされるのが「パーソナル・コーチングの父」、トマス・J・レナード(1995-2003年)である。

数多くのクライアントと接し、コーチの育成にも精力的に取り組んだレナードが考える、人生の成功のための戦略。曰く、成功とは、必死になって追い求めなくても、思うままに引き寄せられるものだという。

そして、引き寄せる際の引力となるのが、人としての「圧倒的な魅力」だ。このたび邦訳が発売されたレナードの『SELFISH(セルフィッシュ)――真の「自分本位」を知れば、人生のあらゆる成功が手に入る』(筆者訳、祥伝社)には、この魅力を磨くための法則がさまざまに語られている。

「魅力の法則」の筆頭としてレナードが挙げるのが、「セルフィッシュになる」ことである。セルフィッシュ、我がまま、あるいは自分本位という言葉には、自己中心的で無神経というイメージが付いて回りがちだが、言葉の定義を変えなくてはならない、とレナードは言う。

セルフィッシュとは、自分が抱える欠乏感に振り回されるのではなく、素直な気持ちに正直に、主体的な選択をしようという、確固たる態度のこと。自分が本当に望むものは何かを自覚し、才能を高めていくという過程において、セルフィッシュになることこそ健全なモチベーションの基本だと説いているのだ。

そして、自らの思いをはっきりと言える明快さ、自分を大切にすることで生まれる心の余裕と、他者への思いやり――これらが「圧倒的な魅力」となって、人も、欲しいものも引き寄せられてくるというわけである。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米メディケアの薬価引き下げ、大半の製薬企業は対応可

ワールド

米銃撃で負傷の州兵1人死亡、アフガン出身容疑者を捜

ワールド

カナダ、気候変動規則を緩和 石油・ガス業界の排出上

ビジネス

都区部コアCPI、11月は+2.8%で横ばい 生鮮
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中