【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
「仕事が好きで前向きな人」の深刻な事情
そうした支払いが、Cさんに重くのしかかっているわけだ。自身の貯金を使い果たし、今はクレジットカードを使っている息子は、支払い請求があるとCさんの妻にお金をせびる。それが拒否されると暴れる。まさに「重い荷物」だ。
Cさんの家計を支えているのは、手取り15万円弱のホテルの仕事だけだ。同い年の妻は保健の外交員をしていたが、今は辞めている。
Cさんは次に誕生日が来たら、年金の受給を開始する予定だが、その額は妻と合わせて月13万円程度。さらにCさんは一度ガンを患っていて、手術もしている。今も薬を飲んでいて、月の医療費は1万円を超える。(45ページより)
知人には生活保護を受けたほうがいいと勧められたことがあるが、抵抗があって受けたくないそうだ。息子が家を出て、妻との二人暮らしになったとしたら月10万円でも暮らしてはいける。しかし息子がつくった借金もあるため、やはり自分が働くしかない。
文面から察する限り、基本的にCさんは仕事のできる人であるようだ。言動からも自信が垣間見える。もしかしたら現場でも、「仕事が好きで前向きな人」と見られているかもしれない。
だが、そんな人でさえ、裏側には深刻な事情を抱えているのだ。それが「働く理由」だとしたら、やるせなさは残ってしまう。しかしCさんだけの問題ではなく、同じようなシニアは他にも多いのだろう。

『ルポ 過労シニア』
若月澪子 著
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[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。他に、ライフハッカー[日本版]、東洋経済オンライン、サライ.jpなどで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『この世界の中心は、中央線なのかもしれない。』( 辰巳出版)など著作多数。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。
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