最新記事
トランプ関税

トランプ関税はブラジルやインドにはチャンス?...「対米赤字を逆手に」

2025年4月10日(木)08時56分
シンガポールのタンジョンパガーのターミナルに陸揚げされた自動車

4月8日、米政権の「相互関税」導入発表を受け、貿易相手国と世界の金融市場は激しい衝撃に見舞われている。写真は3日、シンガポールのタンジョンパガーのターミナルに陸揚げされた自動車(2025年 ロイター/Edgar Su)

米政権の「相互関税」導入発表を受け、貿易相手国と世界の金融市場は激しい衝撃に見舞われている。トランプ大統領の猛攻は続いているものの、南米ブラジルやインドなど、ごく一部は恩恵を受ける可能性のある国として浮上しつつある。ただ、世界は景気後退のリスクに直面しており、恩恵は限定的になる見通しだ。

相互関税措置では、長年同盟関係にある欧州連合(EU)や日本、韓国などは重い関税率を課され打撃は深刻。一方で、ブラジルやインド、トルコ、ケニアは一筋の光明を見出している。


 

ブラジルの場合、相互関税率は最も低い10%。農業大国だけに追い風となっている。中国が対米報復関税を発動すると表明したことで、ブラジルの好敵手である米国の農産物輸出業者は、対中輸出で従来よりも厳しい条件に置かれるためだ。

トランプ氏の仕掛ける貿易戦争は全世界が対象だが、主要ターゲットは中国など対米貿易収支が黒字の国。このため、ブラジルなど赤字国は相互関税を逆手にとることができる。北アフリカのモロッコやエジプト、トルコ、シンガポールも同様だ。

「米国はエジプトだけに関税を課したわけではない」。こう話すのはエジプト・トルコ合弁企業T&Cガーメンツのマグディ・トルバ会長だ。「米国は他の国々にはるかに高い関税を課した。エジプトの成長に好機が到来した」と意気盛んだ。

トルバ会長は、エジプトの繊維産業の主要な好敵手として中国やバングラデシュ、ベトナムを挙げた。いずれも高い関税対象となった国だ。会長は「チャンスは目の前にある。我々はそれをつかみさえすればよい」と言い切った。

トルコの場合は、以前は鉄鋼とアルミニウムの対米輸出で重い関税を課され痛手を負ったが、今や恩恵を受ける立場にある。他の世界の貿易業者がトルコよりも高い関税にあえいでいるためだ。ボラト貿易相は、他の多くの国に課せられた関税を考慮すると、トルコ製品に対する関税は「一番ましだ」と述べた。

対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中