最新記事
サイエンス

僕らは宇宙を「老化させる」ために生きている...池谷裕二が脳研究から導く「生きる意味」

2024年8月1日(木)19時06分
flier編集部

研究で唯一ブレないのは、「可塑性」というテーマ

──池谷先生が脳研究を継続する原動力は何でしょうか。

新しいものが好きだからですかね。科学の研究が楽しいのも、次々に新しいものが発見されるから。世界の誰かが日々発見したことを、論文や学会で知るのが好きなんです。自分にとって新しい考え方を知ると、すぐに感化されて、しばらくはその立場で物事を考えてみたくなります。自分の立脚点がないといえるかもしれませんが、新しい立脚点から世界を眺めると、過去の自分も相対化できる。その積み重ねが面白い。私の研究の原動力は、新しいもの好きで飽きっぽいことなんでしょうね。


その時々で興味のあるテーマを探究しているので、自分が5年後にどんな研究をしているかはわかりません。ただ、1つだけ芯があるのが、脳などの「可塑性」のテーマ。常に変化可能性があるものという点だけはブレていない。そう思うと、可塑性って自分そのものですね(笑)。

私は論文中毒なんです。毎日朝起きると100本から150本の論文をチェックしています。ノーベル賞のうち物理学賞、化学賞、生理学・医学賞の3つが理系の領域ですが、この3つで毎年最大で9人が受賞します。つまり、今年発表された論文のうち9本はノーベル賞級ということ。受賞が何十年後かはわかりませんが、毎月1本くらいはノーベル賞級の論文に出合っているわけです。そう思うとワクワクするんですよね。

今後も膨大な論文を読むなかで、「これだ!」と思うテーマに色々と飛びつくと思います。研究テーマは科学の進展に依存しますし、周囲に刺激を受けて、そこから自分なりに進展させていくのが好きなんです。だから、これからもずっと刺激を受け続けたいですね。

進化しすぎた脳
 著者:池谷裕二
 出版社:講談社
 要約を読む

単純な脳、複雑な「私」
 著者:池谷裕二
 出版社:講談社
 要約を読む

夢を叶えるために脳はある
 著者:池谷裕二
 出版社:講談社
 要約を読む


『夢を叶えるために脳はある』著者の池谷裕二氏

池谷裕二(いけがや ゆうじ)

1970年、静岡県藤枝市生まれ。薬学博士。現在、東京大学薬学部教授。脳研究者。海馬の研究を通じ、脳の健康について探究をつづける。文部科学大臣表彰(若手科学者賞)、日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞、塚原仲晃記念賞などを受賞。主な著書に『記憶力を強くする』『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版』(以上、講談社ブルーバックス)、『海馬』『脳はこんなに悩ましい』(ともに共著、新潮文庫)、『脳には妙なクセがある』(新潮文庫)、『パパは脳研究者』(扶桑社新書)など。近刊に、高校生への脳講義シリーズ完結編となる『夢を叶えるために脳はある』(講談社)がある。

◇ ◇ ◇


flier編集部

本の要約サービス「flier(フライヤー)」は、「書店に並ぶ本の数が多すぎて、何を読めば良いか分からない」「立ち読みをしたり、書評を読んだりしただけでは、どんな内容の本なのか十分につかめない」というビジネスパーソンの悩みに答え、ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。

通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されており、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。

このほか、オンライン読書コミュニティ「flier book labo」の運営など、フライヤーはビジネスパーソンの学びを応援しています。

flier_logo_nwj01.jpg

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

カタール空爆でイスラエル非難相次ぐ、国連人権理事会

ビジネス

タイ中銀、金取引への課税検討 バーツ4年ぶり高値で

ワールド

「ガザは燃えている」、イスラエル軍が地上攻撃開始 

ビジネス

独ZEW景気期待指数、9月は予想外に上昇 「リスク
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中