最新記事

DX

NEC、スイスの金融ソフト会社を買収 菅政権による電子政府の機運も好機に

2020年10月5日(月)13時59分

NECは、スイスの大手金融ソフトウエア企業アバロクを所有する持ち株会社を約2360億円で買収すると発表した。写真は2012年5月、東京の無線通信技術の展示会で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

NEC<6701.T>は5日、スイスの大手金融ソフトウエア企業アバロクを所有する持ち株会社を約2360億円で買収すると発表した。同社の買収案件として最大規模。金融機関向けにIT技術を提供するアバロクを取り込むことで、金融業界のデジタル化支援事業に力を入れる。行政のデジタル化の動きをビジネス機会につなげるねらいもある。

オランダに設立する特別目的会社を通じ、アバロクを傘下に置く持ち株会社WP/AV CH Holdings I社の全株式を取得する。2021年4月までに買収を完了する。21年3月期の連結業績に与える影響は精査中としている。

NECの新野隆社長兼CEOは同日の会見で「高度な資産運用アドバイスや資産取引の利用者の裾野が、これから大きく広がる。長期的な市場の成長が期待できる」と、買収の背景を説明した。欧米ではデジタルを通じた行政と金融との連携が進んでいるとし「デジタル・ファイナンスへの進出は、デジタル・ガバメント(電子政府)領域での事業機会獲得にも資する」と述べた。

アバロクは過去2年に利益が振るわなかったが、会見に同席した山品正勝常務は、データセンターの切り替えなどの一時費用があったとし「今年度から一気に黒字化して大きな成長をしていくとみている」と述べた。継続的に課金するリカーリングビジネスの売上高に占める比率は70―80%だとし「かなり長期にわたってビジネスの確からしさが確認されている」という。

買収資金は「フリーキャッシュフローの範囲内」と、同席した森田隆之副社長兼CFOが説明した。短期的な調達はあるものの、基本的に自己資金としている。

NECによるM&Aは欧州企業が続いてきた。今後、北米でのM&Aは「財務的な健全性を保ちながら機会を検討したい」とした一方、アジアでは「強い事業を持っている」として「小規模のM&Aはあるかもしれないが、大規模の案件は今のところ必要ないと考えている」とした。


(平田紀之、久保信博)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ウクライナ南部ザポリージャで14人負傷、ロシアの攻

ビジネス

アマゾン、第1四半期はクラウド部門売上高さえず 株

ビジネス

アップル、関税で4─6月に9億ドルコスト増 影響抑

ワールド

トランプ政権、零細事業者への関税適用免除を否定 大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中