最新記事

インド

インド経済大失速 失望招いたモディ政権の景気対策

2020年2月11日(火)10時00分

予算案に「企業寄り」の批判

インドの株式市場は、予算案の発表を受けた1日の特別立会において、ここ3カ月以上見られなかった低水準に沈んだ。アナリストによれば、十分な景気刺激策が見られなかったことが足を引っ張ったという。

NSEニフティ50指数は2.5%下落、ベンチマークとなるS&PインドBSEセンセックス指数は2.4%下落した。

シタラマン財務相は2日、記者団に対し、納税者に譲歩しつつ、財務規律と財政出動のバランスを取ろうと努めており、じきに投資家も成長刺激策を評価してくれるだろうと語った。

政府は2020─21年の経済成長率が6.0─6.5%まで加速し、現在2兆9000億ドル近いインドのGDPを2025年までに5兆ドルに成長させるという目標に近づくことになると期待している。

多くの国民はソーシャルメディア上で、今回の予算案はおおむね「企業寄り」であり、9月に既存企業に対する法人税率を30%以上から22%へと引き下げたのに加え、株主配当課税まで免除している、と不満の声を投稿している。

代わりに課税されるのは配当を受ける株主側であり、高所得納税者の負担が増すことになる。

金融緩和効果が相殺されるリスクも

シタラマン財務相によれば、政府は減税措置の詳細をこれから明らかにする予定であり、必要に応じて、国営銀行への資金注入を行う可能性があるという。

またアナリストは、政府の国債依存度が高まれば市中金利が上昇、民間資金への需要が抑えられるクラウディングアウト効果を生じかねず、最近の金融緩和政策による効果が相殺されてしまう可能性があると話している。

インド準備銀行(RBI)は昨年来、ベンチマークとなるレポ金利を135ベーシスポイント切り下げているが、負債に苦しむ銀行は、その恩恵を十分に融資先に還元できていない。

RBI金融政策委員会の次回会合は2月6日に予定されており、エコノミストの過半は、最近の小売インフレ率の急上昇を受けて金利を据え置く一方で、今後の金融緩和に含みを残しておくことになると予想している。

(翻訳:エァクレーレン)

[ニューデリー ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20200218issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月18日号(2月12日発売)は「新型肺炎:どこまで広がるのか」特集。「起きるべくして起きた」被害拡大を防ぐための「処方箋」は? 悲劇を繰り返す中国共産党、厳戒態勢下にある北京の現状、漢方・ワクチンという「対策」......総力レポート。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの過激衣装にネット騒然

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 10

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中