最新記事

新興国

ウクライナ、アルゼンチン、ベネズエラの「有毒トリオ」債が予想外の好成績

年初来のリターンが50%など劇的に高い投資収益を達成したが、アナリストは先行き不透明とバッサリ

2015年12月1日(火)15時20分

11月30日、新興国市場で「有毒トリオ」のレッテルを貼られたウクライナ、アルゼンチン、ベネズエラ3カ国の高利回り債が今年、高い投資収益を達成している。写真は、アルゼンチン大統領選で予想外の勝利を収めた、企業寄りのマウリシオ・マクリ氏。ブエノスアイレスで22日撮影(2015年 ロイター/Ivan Alvarado)

 新興国市場で「有毒トリオ」のレッテルを貼られたウクライナ、アルゼンチン、ベネズエラ3カ国の高利回り債が今年、高い投資収益を達成している。年初にこれらの債券を買う勇気があった投資家は、今頃ほくほく顔だ。

 ウクライナは債務再編が好感され、アルゼンチン大統領選では企業寄りのマウリシオ・マクリ氏が予想外の勝利を収め、ベネズエラの12月の総選挙でも似たような結果が期待されている。このため投資家の3カ国に対する態度は劇的に好転した。

 ウクライナ債は年初来のリターンが約50%と、世界最高。ベネズエラは28%、アルゼンチンは24%で、2位と3位だ。

 最大の新興市場国債券指数、JPモルガンEMBIグローバルの上昇に対し、この3カ国は合計で65%超も寄与している。組み入れ比率は7%強にとどまるにもかかわらずだ。

 ただ、問題は今後相場がどう動くかだ。

 ピクテット・アセット・マネジメントの新興国市場ポートフォリオマネジャー、グイド・チャモロ氏は「リスクが高いため、これらの債券をオーバーウェートにしていた者は少なかっただろうから、多くの投資家はかなり不満を抱いている」と話す。

 これほど目を見張るようなリターンが出るのは稀で、これらの不安定な国で何度も繰り返されるとは考えられないからだ。

 ウクライナは8月に投資家寄りの債務再編策を発表して多くの投資家を驚かせた。しかしロシア向け債務30億ドルの問題が未解決で、東部地域で戦闘が続き、経済は厳しい景気後退に陥っている。

 ソシエテ・ジェネラルの新興国市場ソブリン・クレジット・ストラテジー担当ディレクター、レジス・チャトリアー氏は「ウクライナは国際通貨基金(IMF)の支援を受けているので今はデフォルト(債務不履行)を起こさないだろうが、ファンドメンタルズはひどい」と語る。

 ウクライナ債は既に、債務再編前の水準近くまで反落しており、信用保証コストも上昇を始めた。

ベネズエラの不透明感

 アルゼンチン債は、同国を国際市場に復活させると誓うマクリ氏の勝利を背景に上昇した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中