最新記事

債務危機

ユーロ崩壊への終末シナリオ

2012年5月16日(水)15時25分
ポール・エイムズ

 ギリシャがユーロ離脱に向かえば、ギリシャ国債の利回りは急上昇し、その債務返済能力に疑問符がつく。ポルトガルやアイルランド、スペインの預金者たちも恐怖にさいなまれ、資金を国外に移す可能性がある。それにより、こうした国々の銀行も破綻する。さらにG8(主要8カ国)の一員であるイタリアやフランスにも脅威は押し寄せるだろう。

 そこまでになると、ユーロを救うにはECB(欧州中央銀行)による大規模な介入が必要だろう。この介入には、ドイツなど健全な経済を維持するヨーロッパ北部による南部の国々を支えるための資金援助の増額が求められる。さらに加盟国内での政府債務の共有や、ユーロの切り下げへの合意も必要かもしれない。

ギリシャ再選挙に介入を

 だがドイツやオランダ、オーストリアなどの有権者たちがこのような合意に賛同するかどうかは分からない。フランスで誕生したオランド新大統領の社会党政権などは、北部の国々が求めるであろう緊縮財政に反発する可能性がある。
 
 アイルランドもEUが定めた財政規律に関する規制を、緊縮財政に疲れた国民が今月末の国民投票で拒否すれば、EUによる支援を受けられなくなるかもしれない。

 ギリシャのユーロ離脱は、09年に危機が表面化して以来、最も現実的になっている。一方、多くのギリシャ国民がユーロ圏に留まりたいと思っているのも現実だ。だからヨーロッパの指導者たちは、6月の再選挙では再び救済策をまともに話し合える政党が選ばれることを願っている。

 その願いを叶えるには、ギリシャ以外の国の指導者たちも賭けに出る必要がある。ギリシャの再選挙に直接的に関与し、この選挙はユーロに留まるか離脱するかを選ぶ国民投票なのだとはっきり示すのだ。

From GlobalPost.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英住宅ローン融資、3月は4年ぶり大幅増 優遇税制の

ビジネス

LSEG、第1四半期収益は予想上回る 市場部門が好

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中