最新記事

ネット

ハフィントン流最強ニュースサイトの作り方

2010年9月1日(水)16時03分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

 広告料金を割り引く余力のあるネット大手がコンテンツ面でも存在感を増すことになると、広告料金はますます下がり、小さい会社はより苦戦を強いられることになる。ハフィントンをはじめとするニュースサイトすべてが立ち向かわなければならない問題だ。

 アリアーナには多くの同志がいる。ハフィントン本社の1ブロック先には、テレビジャーナリストのダン・エイブラムズが運営するメディアを語るサイト、メディアアイトのオフィスがある。数ブロック先には、ネットの伝道師ニック・デントンが率いるブログサイト、ゴーカー・メディア。ウルフのニューサーも近所だ。

 5番街に行けば、元メリルリンチのアナリスト、ヘンリー・ブロジェットがCEOを務めるビジネス・インサイダー。ソーホーの少し北のチェルシー地区には、バニティ・フェアやニューヨーカーの編集長を歴任したティナ・ブラウンが運営するニュースサイト、デーリー・ビーストがある。

 ワシントンには政治情報サイトのポリティコのオフィスがあり、シリコンバレーにはおびただしい数のテクノロジー専門ブログがある。テッククランチ、ギガオム、オールシングスDなど。

 ハフィントンはこれらの中でも一番大きく、知名度もとりわけ高い。アリアーナは将来を心配するそぶりはみじんも見せない。1つには、それが彼女の個性だから。アリアーナは圧倒的な存在感を持ち、あらゆるところに顔を出す。自らハフィントンに記事も書くし、13番目の著書『第3世界アメリカ』も間もなく出版される。

最先端の配信システム

 ほかにも週に2つのラジオ番組を持ち、テレビでも毎日のように保守派と政治論争を交わしている。FOXテレビのコメディーアニメの声優まで務めている。

 実際に会うと魅力的な女性で、少し圧倒されそうになる。近くに来る人には誰でも菓子や飲み物を勧める。「ギリシャの血が濃いのよ」と、アリアーナは言う。「おもてなし好きなの」

 アリアーナは保守系コメンテーターとして有名になったが、96年頃にリベラルに転じた。AOLの元重役ケネス・レーラーと共に400万ドルを集め、05年に共同でハフィントン・ポストを設立した。さらにベンチャー・キャピタルから3300万ドルを調達し、現在は178人の社員がいる。

 ハフィントンはいかにして、ライバルのニュースサイトの大半を引き離すことができたのか。豊富な資金も1つの理由だが、もう1つの鍵は新しい技術を迅速に取り入れてきたことだ。

 大手サイトが稼ぐための切り札は、記事がどう配信されるかを決めるソフトウエア「コンテンツ管理システム(CMS)」。ハフィントンには最先端のシステムがあり、しかも常に進化している。30人の技術者はアメリカのほかウクライナ、インド、チリ、フィリピン、ベトナムなどに散らばっている。「1日24時間週7日、開発を続けるためだ」と、CEOのヒッポーは言う。

 このシステムのおかげでハフィントンの編集者はニュースの出し方にさまざまな工夫ができる。リンクや動画、写真やコメントを組み合わせ、ほかの情報源からの情報も加え、それにハフィントンのライターたちがもっともらしい意味付けを与える。そうする間にもリアルタイムでアクセス状況をチェックし、ウケたものとウケなかったものを取捨選択する。

人気検索語を常にチェック

 ハフィントンには、外に出て取材をする昔ながらの記者もいるが、多くの編集スタッフは、本社の広い部屋でテーブルに座っている。レオナルド・ディカプリオの上半身裸の写真や、野球選手の急所をボールが直撃したビデオなど、ほかのサイトからおいしいネタを集めるのも大切な仕事だ。

 記事は社内で執筆するか、ほかのサイトから引っ張ってきたり、両方を合わせて編集する(コンテンツの約40%はよそのサイトで作られたものを基にしている)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシア、340億ドルの対米投資・輸入合意へ 

ワールド

ベトナム、対米貿易協定「企業に希望と期待」 正式条

ビジネス

アングル:国内製造に挑む米企業、価格の壁で早くも挫

ワールド

英サービスPMI、6月改定は52.8 昨年8月以来
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 10
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中