コラム

今年の米中間選挙はここが違う! 民主党が「多様化」したから共和党が「強い」

2022年11月08日(火)17時45分

支持者が左傾化すればするほど、民主党はアイデンティティーの危機に陥る。

私が教えている若い学生たちに聞けば分かる。前回の大統領選の民主党予備選で、若者たちの支持を集める候補はピート・ブティジェッジだろうと、私は予想していた。なにしろ「若くて有能」を絵に描いたような男だ。しかしジョージタウン大学には、ブティジェッジを熱心に支持する学生は皆無に等しかった。うちの学生の半数以上が夢中になって推したのは、なんとバーニー・サンダースだった。

何という皮肉だろう。学生たちは忠実な民主党支持者を自称しつつ、実際には自称「無党派」のサンダースを熱烈に支持していた。これが共和党なら、無所属を自称するような候補者が予備選を勝ち抜ける可能性はゼロに近い。

前々回の2016年の大統領選でドナルド・トランプが勝てた理由の1つは、多くのサンダース支持者が(民主党の予備選を勝ち抜いたヒラリー・クリントンを嫌って)投票に行かなかったのに対し、共和党では予備選でトランプと争った候補の支持者たちも、本選では律義にトランプに票を投じたからだ。

逆に前回2020年の大統領選では、多くの民主党サンダース派がトランプの再選を恐れて投票所に足を運んだ。だからジョー・バイデンは勝てた。

だが、今度の中間選挙にトランプは出馬していない。だから民主党支持者は、選挙区に自分のイデオロギーを共有する候補がいなければ、投票所に行かない可能性が高い。そうなれば民主党は惨敗だ。だからこそ民主党は今回の中間選挙で「敵はトランプだ」というキャンペーンを張り、なんとか支持者を投票に行かせようとしてきた。

221115p18_POH_03.jpg

共和党ではトランプ派の存在感が衰えなかった(写真は21年1月6日の連邦議会議事堂襲撃) BILL CLARK-CQ-ROLL CALL

さて、中間選挙が大統領任期の最初の2年間に対する中間テストだとすれば、その結果は2年後の大統領選の行方を占う材料になる。しかし次回2024年の大統領選は、格別に異例な対決になりそうだ。

なにしろ現職のバイデンも、2020年に敗れたトランプも、まだ正式に出馬を表明していない。トランプは多くの訴訟を抱え、いくつかの疑惑で捜査の対象となっている。現職のバイデンは、2年後には81歳だ。

つまりどちらも、今回の中間選挙の結果とは別の理由で出馬を断念する可能性がある。誰が出るのか分からなければ、当然ながら勝敗の予想はできない。

敗北からの修正力が問われる

中間選挙では与党が議席を減らすのが常だが、仮に今回、民主党がその常識を覆したなら、バイデンには2期目を目指す資格があるだろう。だが大方の予想以上に議席を減らしたら、バイデンには再選出馬を断念せよという圧力が高まる。後継者を推薦するのは勝手だが、決めるのは予備選で投票する人たちだ。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ビジネス

米国株式市場=小幅高、利下げ期待で ネトフリの買収
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story