Picture Power

リビアに散った戦場カメラマン ティム・ヘザーリントン

In Memoriam: Tim Hetherington 1970-2011

Photographs by Tim Hetherington

リビアに散った戦場カメラマン ティム・ヘザーリントン

In Memoriam: Tim Hetherington 1970-2011

Photographs by Tim Hetherington

物資の補給にヘリコプターは欠かせない。「戦争は多くの矛盾をはらんでいる。残忍さと勇敢さ、喜劇と悲劇、友情、憎しみ、愛、倦怠感……『戦争』そのものを撮るよりも、こうした矛盾を伝えたかった」ヘザーリントンは語る

 今朝メールを開くと、ティム・ヘザーリントンがリビアで亡くなったと短く書かれていた。西部ミスラタで取材中に砲撃を受け、まもなく失血死した。ティムとの付き合いはもう10年以上になるだろうか、本誌の写真特集ページ「ピクチャー・パワー」などで幾度となく一緒に仕事をしてきた。だが、残念ながら写真集『 INFIDEL(異教徒)』のレビューが彼の作品の最後の掲載となってしまった。

 彼の思慮深い横顔が目に浮かぶ ----私たちは大事な同志を亡くしてしまった。
 ご家族の皆様に心からお悔やみを申し上げます。

――編集部・片岡英子

 関連記事
 リビアに散った2人の戦場カメラマン
 世界報道写真コンテスト:「今年最高の一枚」など存在しない
****************************************************************************************************************
 [2010年11月3日号掲載]

俺たちが生きる戦場の日常

 アフガニスタン東部コレンガル渓谷のレストレポ前哨基地といえば、アフガニスタン戦争で最も危険と言われた米軍の最前線。銃弾と砲弾が飛び交うこの地で、写真家のティム・ヘザーリントンとドキュメンタリー作家のセバスチャン・ユンガーは5カ月間ずつ従軍取材を決行した。そして完成したのが、ドキュメンタリー映画『レストレポ』と、写真集『 INFIDEL(異教徒)』だ(米軍は10年4月にコレンガルから撤退)。

 2つの作品が伝えるのは、アフガニスタン戦争の政治的側面ではない。そこに送り込まれた若者たちのリアルな日常と素顔だ。外界から閉ざされた基地で、米兵たちは絶えず死への恐怖を抱きながら家族を思い、仲間の死に泣き、攻撃のない退屈な時間をギターやポルノ写真でやり過ごす。

 ヘザーリントンが写したのは、殺すか殺されるかの戦場で仲間たちとじゃれ合い、タトゥーだらけの体で少年のような顔をして眠る男たちの姿。『 INFIDEL』には、爆撃映像が伝えない戦争の「人間味」があふれている。

 写真集のタイトルは、兵士たちが体に彫ったタトゥー(3番目の写真)から付けた。なぜ「異教徒」なのかって?「敵がラジオで俺らをこう呼んでいるからさ」

 写真集『 INFIDEL 』

PHOTOGRAPHS BY © TIM HETHERINGTON/CHRIS BOOT LTD.; "Infidel" by Tim Hetherington is published by Chris Boot.

MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中