コラム

日本株上昇~バブル後最高値更新の意味~

2023年11月29日(水)16時50分
岸田首相

2024年も日本株の上昇は続くだろうか...... Brittany Hosea-Small/REUTERS

<日経平均株価などの指数が、1989年のバブル期につけた最高値を見据えて上昇するフェーズに移りつつある。その意味を読み解く......>

日経平均株価は、11月半ばから33000円台に上昇、7月につけたバブル以来の最高値を一時更新した。もう一つの株価指数であるTOPIXは9月半ばにバブル後の最高値を更新していたが、この水準に再び近づきつつある。TOPIXの年初来リターンが26%(11月24日時点)となっており、このままなら大幅なプラスリターンとなり、2023年の日本株はかなり好調だったということになりそうである。


日経平均株価などの指数が、1989年のバブル期につけた最高値を見据えて上昇するフェーズに移りつつある。ただ、1989年末の株価水準が近づきつつあるからといって、「株式バブル」が再び訪れつつある、というわけではないだろう。

株価指数が高値更新していない日本が異例

そもそも、過去30年間以上の長きにわたり、株式市場が高値を超えることなく停滞していた主要先進国は日本のみである。1990年代から約35年日本の株価が高値を超えなかったので、1989年の最高値は手が届かない水準と考える方が多いのかもしれない。

ただ、株価指数が高値更新していない日本が異例であるのが実情である。適度なプラスのインフレで経済成長が実現している米欧など主要な先進国では、景気回復局面が訪れれば、その都度株価指数は高値を更新するケースが多い。ところが日本では、1990年代から何度か景気回復局面が訪れたが、他国では当たり前のことがなかなか起きなかった。

最高値を更新できなかった要因は......

最高値を更新できなかった要因はいくつか挙げられ、1989年末の日本の株価水準があまりに高すぎたことがあっただろう。ただ、より本質的な、日本株が停滞した要因があったと筆者は考えている。

それは、1990年代半ば以降、日本ではデフレと低成長に対して適切な政策が実現せずに、経済のパイである名目GDPの水準が長年頭打ちとなってきたことである。将来の企業利益の予想が株価に決定的に影響するが、経済全体の規模(=所得)が増えなければ、企業利益も持続的に増えない、というシンプルな理屈である。

これが変わったきっかけは、2013年に黒田総裁の態勢となってから金融緩和が強化され、経済正常化に踏み出したことである。消費増税など逆風もあったが名目GDPは、2017年には550兆円台まで増えて、2000年代までの上限を超えてきた。この時既に、日本株が長期の停滞から抜け出す土壌が整いつつあった。

ただ、その後の2019年の消費増税や20年の新型コロナ禍で、名目GDPの拡大が止まり、2022年まで550兆円付近で足踏みしていた。そして、2023年1-3月にはインフレと経済正常化があいまって、名目GDPは570兆円と従来のレンジを明確に上回り、7-9月期には588兆円まで大きく増えた。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、リオ・ティント株売却 資源採取産業から

ワールド

ドイツ外相の中国訪問延期、会談の調整つかず

ビジネス

ヘッジファンド、AI関連株投資が16年以来の高水準

ワールド

ロシア、米欧の新たな制裁を分析中 国益に沿って行動
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 2
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼稚園をロシアが攻撃 「惨劇の様子」を捉えた映像が話題に
  • 3
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 4
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 7
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 8
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 9
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 10
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 10
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story