『ありふれた教室』は徹底的に地味、でもあり得ないほどの完成度だ
物語の始まりのエピソードは、教室や職員室で起きた小銭の窃盗事件。誰が犯人なのか。生徒を疑う教師。守ろうとする教師。でも教師たちには事件化する意図はない。内輪で済ませるつもりだった。それが予想もつかない方向へ展開する。
特に後半であなたは、主人公である女性教師カーラの視点に自分を重ねるはずだ。少しずつ追い詰められる。生徒たちに。その親たちに。そして同僚である教師たちに。
自分は何を間違えたのか。どうすべきだったのか。今から修復はできないのか。あなたはカーラと一緒に思い惑う。悩む。でも事態は変わらない。いやもっと悪くなる。
正義のヒーローは現れないし、悪のカリスマも登場しない。教師たちも生徒たちもその親たちも、それぞれ性格に多少の難や一長一短はあるけれど、それも(誰もが持つ)日常的な誤差の範囲であり、基本的にはみな等身大でつつましい。
でも閉じた組織の中で小さくはじけた何かが、少しずつ周囲に連鎖し、やがて世界が一変する。いや、正確には世界は変わっていない。あなたの視点が変わっただけだ。ならば見慣れた光景が初めて見る景色になる。ずっと親しくしていた人が、初めて会う人のように分からなくなる。
最後まで目を離せない。音楽の使い方、言葉の一つ一つ、教室と職員室を行き来するカメラワーク、子供たちのちょっとしたしぐさ、映画を構成する全ての要素が、あり得ないほどの完成度に達している。ぎっしりと凝縮された99分だ。
『ありふれた教室』(5月17日公開)
©if... Productions/ZDF/arte MMXXII
監督/イルケル・チャタク
出演/レオニー・ベネシュ、レオナルト・シュテットニッシュ、エーファ・レーバウ
<本誌2024年5月14日号掲載>

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