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SMエンタテインメント発のガールズグループHearts2Heartsに見る同社の「伝統と革新」
「SM 3.0」を象徴する存在
「SM3.0」とは2023年2月に発表されたSMの戦略を指す。具体的には同社が成長していくためにIP(知的財産)、事業、海外、投資に重点を置くというものである。SMの創業者であるイ・スマンと彼の甥などが経営権をめぐる騒動を起こしていた時期に出したこの戦略は、同社の"脱イ・スマン体制"を強くアピールするのが狙いだったのだろう。Hearts2Heartsは、「SM3.0」の声明では"2023年の第1四半期に登場するガールズグループ"だったが、結局は今年デビュー。それでもSM創立30周年を迎えた月に出した新人だけに周囲の期待がかなり大きいのは間違いない。
彼女たちのサウンド&ビジュアルは、じっくりチェックしてみると実に味わい深い。デビュー曲「The Chase」の作曲は複数の外国人作家が参加しているが、おそらく取りまとめ役は"SMサウンド"の基本を作ったプロデューサー・KENZIEだろう。第1弾シングルは、従来の制作手法で失敗のないサウンドにしたと思われる。
うねるシンセベースのリフレインの上を幻想的な和音がふわふわと浮かんでいるようなトラックは、NewJeansやBOYNEXTDOORなどが得意とする流行の"イージーリスニング"を多少意識しつつも、SHINeeの「Lucifer」(2010年)やf(x)の「4 Walls」(2015年)といった先輩たちの攻めた音作りをリスペクトしているとも言えよう。
多国籍メンバーが紡ぐ新たな音楽の可能性
メンバーが8人いるのも注目すべきポイントだ。5人前後のガールズグループがメインストリームとなっている現在、あえて大所帯で勝負したのは、SMの看板グループ・少女時代のイメージを重ねたと見るのは考えすぎだろうか。(2015年以降は8人組として活躍する)この先輩のようになってほしいと同じ編成にしたと思うのは、実際に他の事務所でそのような事例があるからなのだが、現時点では推測の域を出ない。
メンバーの容姿はいずれも清潔感があって可愛らしい。一見すると他のライバルと比較して際立った違いがないように感じるかもしれないが、SMの過去のアイドルグループのリメイクと言えなくもない。K-POPシーンを長い間見てきた者としては、同社の中ではいまひとつの人気だったM.I.L.K.(2001年デビュー)、SHINVI(2002年デビュー)あたりをY2Kファッションのような感覚で再現したと深読みしたくなる。このあたりに関しては発掘・育成した関係者に確認してみたいところだ。
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