コラム

ドイツ発の新産業革命「インダストリー4.0」の波に乗ろうとする中国企業と、動きが鈍い日本企業

2016年05月06日(金)15時24分

 昨年は日本からドイツへインダストリー4.0に関する視察が殺到してドイツの研究機関に「日本人の視察はもうこりごり」(『日経ビジネス』2015年11月16日号)と言われるほどだったのに、今年のハノーファー・メッセでは一転して日本企業が冷淡に見えるのはなぜなのでしょう。「インダストリー4.0なんてしょせんは言葉遊びだ」という懐疑論が日本では根強い(『日本経済新聞』2016年5月3日)からでしょうか。たしかに、「第4の産業革命」だと煽り立てることで、体よく産業用機器を売り込もうとしているだけなのかもしれません。

 しかし、日本にはもともとトヨタ生産方式やセル生産など、「インダストリー4.0」の原型のようなアイディアを実践してきた実績があります。既存の技術や機器をうまくパッケージングしたりヨーロッパ向けに改造したりすればハノーファー・メッセで宣伝できるネタには事欠かないように思います。実力はいま一つでも「インダストリー4.0」に寄り添って何とか商機をつかもうと頑張る中国企業に比べ、実力は秘めているのに淡泊に我が道を行くばかりで、ヨーロッパでの商機をつかもうとしない日本企業が好対照のように見えました。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

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