コラム

ブロックチェーンで「夜の街」歌舞伎町を変えたい

2018年06月25日(月)18時22分

もう1つ、「一番コイン」には重要な役割がある。「一番アプリ」をリリースする前にまず、事業の可能性や意義を認めてくれた投資家向けにトークンセールを行う予定だ。その金で口コミアプリの開発を行うという流れである。いずれ複数の仮想通貨取引所に上場もさせるつもりだ。

トークンセール実施後も、一番株式会社は相当数の「一番コイン」を保有する。これは資産だ。食べ○グのように飲食店から広告料をもらうビジネスモデルとは異なり、口コミアプリをきっちりと運用し評価を高めていくことで、この保有資産の価値を高めるという仕組みになる。これにより、ひたすらユーザーの利便性だけに専念することができるのだ。

まずは歌舞伎町一番街だが、この地域社会の発展に役立つものになると信じている。消費者も飲食店も、そして投資家も、みんなが得をするWin-Winの関係。それが「一番コイン」のビジネスプランだ。

もちろん、このプランはまだ紙の上のものでしかない。これもまたトークンエコノミーの面白いところだ。実際にサービスを開発する前にトークンを販売し、資金調達を行うのだ。事業をそれなりに展開した後で行うIPO(新規株式公開)と違って、ビジネスプランさえよければ、お金のない起業家でも潤沢な事業資金を手に入れることができる仕組みである。

「一番コイン」は今夏にもセールを行い、その資金でアプリなどサービス開発に着手する予定だ。

「理解できないから怪しい」では日本は停滞したまま

このようにメリットばかりを話すと、怪しく思われる方もいるだろう。仮想通貨やトークンを使った資金調達(ICOと呼ばれる)では、実際に詐欺も多い。李小牧も怪しげなビジネスの広告塔になったのではないか、と。

なるほど、新しいテクノロジーが出てくれば、流行りの言葉を使った詐欺が登場するのは世の常だ。「一番コイン」にしても、トークンセールで販売された後も事業が失敗する可能性は存在する。客観的に見ればリスクの高い投資かもしれない。

だからといって、理解できないから怪しいものとして遠ざけているだけでは、日本は停滞したままではないだろうか。新しいテクノロジーを利用して、経済を活性化させていく。土地も資源もない日本がここまで発展できたのは、こうした進取の心があったがゆえではないのか。

ブロックチェーンやトークンエコノミーについても、ただなんとなく嫌うのではなく、ちゃんと理解して向き合うことが必要だ。私とてテクノロジーの専門家ではないが、必死の勉強の末、この新しい技術が新宿を豊かにする可能性があると確信し挑戦を決めた。

新しいものにはリスクがある。それは当然だ。そのリスクをよく理解しつつも、えいやっとチャレンジする。その勇気こそが社会を発展させる。何歳になっても、この勇気を忘れないようにしたいと願っている。

ニューズウィーク日本版 脳寿命を延ばす20の習慣
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月28日号(10月21日発売)は「脳寿命を延ばす20の習慣」特集。高齢者医療専門家・和田秀樹医師が説く、脳の健康を保ち認知症を予防する日々の行動と心がけ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン最高指導者、米の協議申し出を拒否 核能力消滅

ワールド

米政府閉鎖、今週中に終了の公算大=NEC委員長 

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏との会談「前向き」 防空

ワールド

豪、中国軍機の照明弾投下に抗議 南シナ海哨戒中に「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 6
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 7
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story