コラム

「EV後進国」日本の潮目を変えた新型軽EV 地方で売れる理由は?

2022年07月19日(火)20時25分

三菱と日産によると、目標販売台数を大きく越えているという。三菱eKクロスEVは5月20日から7月5日の間で4609台を受注(月販売目標台数は860台)、日産サクラは発表から3週間で約1万1000台と前例のない受注数となっている。埼玉、千葉、神奈川、福岡などの都市圏、ガソリンスタンドが少ない離島を抱える鹿児島を中心に受注が伸びている。岡山、香川でも好調だと聞く。今後は軽自動車販売の盛んな地方都市での販売増を見込んでいるという。

現状、補助金頼みのところはあるが、サブスクリプションの料金体系にするなど、新しい乗り物にふさわしいマーケティングを展開すれば、事態は大きく変わると考えている。

いずれ欧州にも?

軽自動車は日本のみの車両の規格で海外には存在しない。自動車研究家の山本シンヤ氏は「欧州でも売れるのではないか。パリなど道が狭い上に絶対的な加速力が求められる道路環境に最適だ。自動車メーカー単独では法律の問題もあるので国と連携して動くべき」と主張する。

小さなクルマで代表的な欧州メーカーのEVといえば、パリのEVシェアリング「Autolib'(オートリブ)」に使われた車両があるが、筆者は耐久性などに問題があったと感じている。コンパクトながら大人4人が快適に過ごせる空間、普通車と変わらない走りとクオリティを備える小型車を実現する日本の自動車メーカーは「軽自動車×EV」で海外でも勝負できるのではないだろうか。

軽EV誕生のインパクトは、日本のEV普及の潮目を変えつつあるというだけではない。扱いやすいこのボディサイズは欧州の都市にもフィットするのではないかと予想している。

20240604issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年6月4日号(5月28日発売)は「イラン大統領墜落死の衝撃」特集。強硬派ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える グレン・カール(元CIA工作員)

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

楠田悦子

モビリティジャーナリスト。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」、「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。共著『最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本』(ソーテック社)、編著『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)、単著に『60分でわかる! MaaS モビリティ革命』(技術評論社)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

「バーゼル3」最終規則、25年1月適用開始をEU最

ワールド

南ア総選挙、与党ANCが過半数割れの公算 開票始ま

ワールド

ロシア軍、ハリコフ州で増強 攻勢には不十分とウクラ

ワールド

EU、エネルギー憲章条約脱退で合意 気候変動取り組
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程でクラスター弾搭載可能なATACMS

  • 2

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカで増加中...導入企業が語った「効果と副作用」

  • 3

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 4

    地球の水不足が深刻化...今世紀末までに世界人口の66…

  • 5

    「天国に一番近い島」で起きた暴動、フランスがニュ…

  • 6

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 7

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧…

  • 10

    ウクライナ、ロシア国境奥深くの石油施設に猛攻 ア…

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 8

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story