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「パー券」資金還流問題、議員のノルマとキックバックと重大な嫌疑
派閥議員へのノルマと「人ごとの手抜き感」
対して派閥パーティーはメカニズムがもう少し複雑化する。パー券を売りさばくのは派閥所属の各議員である。しかしパー券の売り上げが帰属するのは派閥であって議員ではないから「人ごとの手抜き感」が生まれる。そこで生み出されるのが「ノルマ」だ。
ポストの軽重によって濃淡あるノルマが課せられ、議員は義務を果たすべく支援者に売りさばく。政治家個人のパーティー券を購入してくれる大切な支援者にさらに派閥パー券を購入してもらうのは、はばかられることが多い。おのずと派閥パー券の主たる売り込み先は「大口顧客」つまり大企業や業界団体に向かう。
例えばある業界団体(政治団体)が議員複数から同時に売り込みを受け、付き合いの程度に応じて議員Aから10枚(20万円)、議員Bから5枚(10万円)購入した場合、業界団体側は5万円以上の支出は全て収支報告書に記載する義務があるので、派閥に対する合計30万円の支払いは業界団体側の収支報告書に支出として記載される。
しかし、派閥側がAとBを横串しで突き合わせることなく漫然と処理した場合、それぞれ単独では20万円以下の収入であるため、業界団体の名称などの「対価支払の詳細」は派閥側収支報告書の収入欄に記載されない事態が生じる。
岸田文雄首相は11月21日の衆議院予算委員会で「対価の支払総額は全く変わっていない。20万円を超えた支払いについて支払者の名称を記載しなければならないところ、それが漏れていたということであります。『裏金』うんぬんというご指摘は当たらない」と答弁した。実際に派閥が得たパーティー収入総額が正確に報告されていたとすれば、単なる事務処理上の記載ミス、のようにも思われた。
キックバックと脱税嫌疑
ところが12月1日に朝日新聞が「安倍派裏金1億円超か」とするスクープ記事を放った。疑惑の焦点は、派閥から議員への「還流」だ。派閥所属議員がパー券を売った場合、売り上げの一部(ノルマ超過分)が議員に渡されることがある。「インセンティブ」としてのキックバックだ。その実態は派閥によって異なるが、個々の収支が正確に報告されていれば違法性はない。
しかし、「還流分を議員が自由に処理するためには議員側収支報告書に記載しないほうが都合がよい」として、払い戻す派閥側でも支出として記載せず、さらにつじつまを合わせるべくパーティー収入にも計上しない運用があったとすれば、政治資金規正法が求める政治活動の透明化要請をほごにする「裏金」というそしりを免れない。議員が個人として受領しひそかに使っていれば、政治家個人に対する寄付の禁止(政党のみが許されている)に該当するだけでなく、脱税の嫌疑も生じる。
永田町の人事は派閥の力学がものをいう。パー券さばきは派閥というムラへの貢献をアピールする一里塚だ。しかし法令遵守が踏みにじられることが続けば、これまで等閑視されてきたに等しい派閥パーティー券をめぐる違法行為に今後、司直の手が入ることになる。腐敗防止の自律的対応が今こそ求められている。
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