コラム

エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流していた? 首相の辞任にも関与していた可能性も

2026年02月03日(火)17時10分

「今日ようやくブラウン首相を辞めさせたよ」

エプスタインは億万長者の税務や資産管理のコンサルティングも行い、人脈を広げた。要人の弱みを握り、外国勢力に提供する情報ブローカーでもあった。ロシアの情報機関やイスラエルのモサド、サウジアラビア当局、カダフィ独裁下のリビア情報部との関係も取り沙汰される。

10年5月、ブラウン首相が退陣を決断した際、政権中枢にいたマンデルソン氏は助言を与えていた。退陣を知っていたのはごく一部だったが、マンデルソン氏は「今日ようやく彼を辞めさせたよ」とエプスタインにメールを送り、公表前に退陣を知らせていた。


英BBC放送がエプスタイン文書から収賄、背任など公職における不正行為で捜査を受ける可能性がある関係をまとめている。ブラウン政権の事実上の副首相を務めていた09年6月、マンデルソン氏は英国経済に関する首相政策顧問のメモをエプスタインに転送していた。

エプスタインは情報をもとに巨額の富を手に入れた可能性

マンデルソン氏は「首相に送られた興味深いメモだ」と書き添え、エプスタインからの「売却可能な資産とは何?」という質問に「土地や不動産だと思う」と答えていた。ユーロ危機の回避を目的としたEU(欧州連合)の5000億ユーロ救済措置についても事前通知していた。

10年5月、ギリシャ債務危機が単一通貨ユーロ圏全体に広がる懸念が深まる中、EU財務相の合意が発表される前日「情報筋によれば5000億ユーロの救済がほぼ完了したとのことだ」とのエプスタインの打診にマンデルソン氏は「間もなく発表されるはずだ」と情報を確認していた。

09年12月、エプスタインは「銀行家ボーナスの現金部分のみを課税対象とするよう変更できる可能性はあるか」と問い合わせ、マンデルソン氏は「修正に向け懸命に努力している。財務省は固執しているが、私が対応中だ」と返信していた。これが犯罪でなかったら何が犯罪なのか。

エプスタインはマンデルソン氏の極秘情報をもとに市場で巨額の富を手に入れ、未成年者からの性的搾取と人脈形成に使われていたとみてほぼ間違いないだろう。そして、その情報はエプスタインを通じてロシアのウラジーミル・プーチン大統領に流れていた可能性さえある。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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