焦点:外為特会、減税財源化に3つのハードル 「ほくほく」持続は不透明
写真は日本円紙幣を使ったイメージ。2017年6月に撮影。REUTERS/Thomas White
Takahiko Wada
[東京 3日 ロイター] - 高市早苗首相の発言を受け、外国為替特別会計(外為特会)に改めて市場の関心が向かっている。一部の野党は消費減税などの財源として着目するが、政府関係者や財務官経験者らはその制度趣旨などから財源としての活用は難しいと指摘する。首相が「ほくほく」と表現した外為特会の利益も、もとは過去の外貨買い介入の「遺産」がベースにある。外貨準備そのものがどんどん増えていくわけではなく、市況に左右されやすいものだ。
<外為特会へ高まる関心>
円安で外為特会の運用は今、「ほくほくの状態」――。1月31日の遊説先での高市首相の発言が波紋を呼んでいる。高市首相は自身のSNSで「為替変動にも強い経済構造を作りたい」との趣旨で申し上げたと釈明したが、一連の発言は円安容認と受け止められ、週明けの外為市場で円安の一因となった。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「円安が進み外為特会の剰余金が膨らめば、消費減税の財源に使えるとの考えがあると推察する」とコメントした。
外為特会の利益となる剰余金は24年度に5兆3603億円と過去最大となった。ただ、剰余金は最大でその7割を一般会計に繰り入れることが可能で、24年度は約6割に当たる3兆2007億円が25年度の一般会計の歳入に繰り入れられた。減税の財源として「新規の打ち出の小槌として使えるわけではない」(みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介主席エコノミスト)という。
<外為特会の活用、実現には3つの壁>
外為特会の活用について、政府関係者や財務官経験者、市場関係者の間では懐疑的な見方が多い。
1つめのハードルは為替介入の原資という外為特会の制度趣旨だ。足元では円安が進みやすい地合いが続き、ドル/円が上昇基調を強めれば政府・日銀によるドル売り・円買い介入の可能性が意識されやすい。今後、「実弾介入」が実施される場合、外為特会の規模感は為替介入の余力を測るものとして思惑視されることになる。
元財務官の渡辺博史・東京成徳大学客員教授は、円買い介入する時に外貨準備が乏しければ「(介入は)それ以上できないのではと心配する人もいる」と述べる。
外貨準備は外為特会と日銀保有の外貨資産で構成される。
また、外為特会は不要な円貨を保有し続けない制度設計になっており、法律の規定に従い、手元に円貨ができれば政府短期証券(FB)の償還に当てなければならない。ある政府関係者は、米国債の売却は米国側の反発が避けられず、この点からも消費減税の財源などに外為特会を活用することは現実味に乏しいとみている。
さらに財源としての安定性があるのかという点だ。外為特会の24年度の剰余金は過去最大に膨らんだが、これは保有する米国債の利息収入と円安により、円への換算額が増えたためだ。剰余金は相場次第で大きく変動し得る。また、仮に円安で剰余金が増えたとしても、円安阻止で円買い介入を実施すれば外貨準備は減少する。
外貨準備は25年末時点で1兆3697億ドル(約212兆3000億円)に上るが、これは歴代財務官の下での外貨買い介入の積み重ねによるところが大きい。ドル買い介入によりドルを調達すれば外為特会で米国債などの資産が増えるが、現在は円安を警戒する局面で状況は異なる。
<制度目的とガバナンスの議論を優先すべき>
中道改革連合は政府系ファンド(SWF)の創設で財源を確保することを公約に盛り込んだ。公明党でSWF創設に向けた検討委員会の委員長を務める上田勇参院議員は1月、ロイターの取材に対し、外為特会は「為替安定という目的に対して、かなり多すぎるのではないか」とコメント。米国債中心の運用は安定しているが「もう少し積極的な運用ができるのではないか」と述べた。
みずほリサーチの酒井氏は「選挙後、消費税減税の財源として外為特会の剰余金を含めた税外収入の活用を巡る議論は活発化しそうだ」とみる。
ただ、国会では「財源として使えるかどうか」という政治論と「安定財源になり得るか」という実務論の間で「温度差のある議論になる可能性が高いのではないか」と話す。酒井氏は、財源ありきの議論ではなく、制度目的とガバナンスの設計に関する議論が先ではないかと警鐘を鳴らす。





