コラム

富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金持ちに厳しい」税制改革で大損した国

2025年06月26日(木)18時56分

この10年、毎年長者流出ランキングでトップだった中国からの流出は2位の7800人(総額559億ドル)。ワーストワンの英国1万6500人(同918億ドル)。3位インド3500人(同262億ドル)、4位韓国2400人(同152億ドル)、5位ロシア1500人(同147億ドル)。

英国では税務上の本籍地が国外にある居住者(ノンドム)の優遇税制廃止で海外資産が相続税の対象となり、大量の長者が英国を脱出した。英国外国投資家協会は英紙タイムズに「国家の自滅行為。打撃を受けるのは企業、雇用、投資、税収、慈善活動だ」と語っている。

欧州の国が長者流出で世界をリード

逆に米国は7500人(総額437億ドル)の長者が流入、UAEの9800人(同630億ドル)に次ぐ流入ランキング2位。500万ドルで永住権を得られるドナルド・トランプ米大統領のゴールドカード効果というより税率の低い州、整備された投資移民制度、世界最大の資本市場が強みだ。

ヘンリー&パートナーズのユルグ・ステフェン最高経営責任者(CEO)は「10年間の調査で初めて欧州の国が長者流出で世界をリードするようになった。税制変更だけではなく富裕層の間でより大きな機会、自由、安定は他の地域にあるという認識が深まっている」と分析する。

欧州連合(EU)主要国のフランス、スペイン、ドイツでもそれぞれ800人、500人、400人の流出。このほかノルウェー150人、アイルランド100人、スウェーデン50人の流出となった。多くの富裕層が欧州より投資に有利な拠点に移住しているため大幅な資産減少が見込まれる。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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