コラム

中国紙「史上最強の人民軍を構築せよ」 ペロシ訪台は中国を怒らせただけなのか?

2022年08月03日(水)12時11分

米メディア、Voxによると、バイデン政権の中には、中国は台湾上空に飛行禁止区域を設け、ペロシ氏の渡航を足止めする恐れもあると心配する関係者もいたそうだ。これに対してペロシ氏は「台湾への支持を示すことは重要だ」と述べる一方で、安全保障上の問題があるとしてアジア歴訪の詳細について台湾の地を踏むまで明かさなかった。

5月に来日したバイデン氏は岸田文雄首相との共同記者会見で「あなたはウクライナ紛争に軍事的に関与したくなかった。同じ状況になったら台湾を守るために軍事的に関与する気はあるか」と問われ、「イエス」と即答した。台湾が中国に侵攻された場合、軍事介入するのかどうかを明言しない「戦略的曖昧さ」を変更したとの見方も出た。

バイデン発言の真意は分からないが、ロシアのウクライナ侵攻を止められなかったアメリカにこれまでの「戦略的曖昧さ」を維持するだけでは台湾の安全は保障できないという重大な懸念が生じているのだけは確かだ。

習氏「火遊びをする者は火で滅ぼされる」

習氏はバイデン氏と電話会談した際「火遊びをする者は火で滅ぼされる」と牽制し、緊張感は一気に増していた。米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は「私たちは国として(中国の)暴言や潜在的な行動に怯えていてはいけない。われわれは彼女をサポートするためにできることは何でもする」と米CNNに語った。

中国国営メディアは中国が海峡を越えて新型戦闘機を送ったと報じたが、台湾国防部はこれに反論した。一方、北京は4~7日にかけ台湾を囲む6つの区域で実弾演習を行う計画を発表し、2日夜から準備を始めた。ペロシ氏は3日まで台湾に滞在する予定で緊張感が漂う。

「台湾海峡での長距離実弾射撃」と「東部海域での通常誘導射撃試験」が含まれるため、船舶や航空機は「安全上の理由」から一部は台湾の領海と重なるこれらの区域に立ち入らないよう警告されたという。

フィナンシャル・タイムズ紙は社説で「ペロシ氏の訪問は台湾の安全保障を改善することなく、北京を刺激する大見得を切る行為と見なされる危険性がある。それより台湾関係法の下で兵器供給を強化し、演習を拡大すべきだ。その方が派手なだけで空虚な訪問よりはるかに効果的だろう」とペロシ氏の訪台を批判した。

しかし習氏が軍事力でアメリカを圧倒できると判断した時、台湾海峡が火を吹くのを避けるのは至難の業だろう。日本の岸田文雄首相は、インド太平洋の安全保障の礎となる日米同盟と日米豪印4カ国(クアッド)を軸に、AUKUS、北大西洋条約機構(NATO)とも結束を強める必要がある。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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