コラム

コロナ規制の最中も続いた英首相官邸の「飲み文化」

2022年01月15日(土)22時13分

当時、公園など屋外の公共スペースでも最大6人までしか会うことができないコロナ規制を市民に強いる一方で、ダウニング街は毎週金曜日の午後4~7時に「ワインタイム・フライデー」を予定していた。フィリップ殿下の葬儀が営まれる前日の21年4月16日(金曜日)にも政府顧問や官僚が首相官邸の地下室や庭園で飲んだり踊ったりしていた。

「政界の道化師」と呼ばれた首相の虚飾の人生

エリザベス女王の気持ちに配慮したジョンソン首相は、首相官邸にバッキンガム宮殿(英王室)に謝罪するよう指示した。しかし世論調査では回答者の10人のうち7人が、ジョンソン首相はパーティーへの関与について真実を語っていないと考えており、63%は辞任すべきだと回答。10人のうち8人はジョンソン首相が参加したイベントは違法と考えていた。

ジョンソン首相は虚飾と言い逃れの人生を送ってきた。最初の妻と1987年に結婚(1993年に離婚)、指輪を受け取ってから1時間もしないうちに落として失くしている。マネジメント・コンサルタントとして働き始めたものの1週間でクビになり、英紙タイムズ見習い時代の1988年には記事を面白くするため談話をデッチ上げて解雇されている。

英紙デーリー・テレグラフのブリュッセル特派員時代にはお得意のエンターテインメント精神を発揮して「カタツムリが魚だって」「ソーセージやチップスにも規制」と欧州連合(EU)の前身、欧州経済共同体(EEC)をこき下ろす記事を連発。2004年にはスペクテイター誌の女性コラムニストとの不倫が発覚して「影の芸術相」を解任されている。

美術コンサルタントとの間に婚外子の娘がいることが発覚。2016年のEU国民投票のキャンペーンで「イギリスは毎週、EUに3億5000万ポンド(約547億円)を渡している」とウソをついたと告発される。デービッド・キャメロン首相の辞任を受けた保守党党首選で出馬を表明するはずだった記者会見で突然取りやめを発表し、イギリス中を唖然とさせる。

200年近く維持してきた保守党伝統の議席を失う

2人目の妻と25年に及んだ結婚生活に終止符を打ち、保守党の報道担当キャリー・シモンズさんと結婚。首相官邸の高額改装費を与党・保守党への政治献金者に肩代わりさせていた疑惑が発覚。保守党元閣僚が報酬を受け取る見返りに業者に便宜を図っていたロビー活動疑惑が明るみに出ると議員懲罰制度を変更しようとして議会を紛糾させ謝罪に追い込まれた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、方向感欠く取引 来週の日銀
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story