コラム

年金財政は好転へ...将来は「年金増額」の可能性大な一方、やはり割を食う「あの世代」

2024年07月23日(火)18時34分
年金制度の未来像

SAYURI I/SHUTTERSTOCK

<5年に1度の公的年金「財政検証」の結果を見ると、年金財政は好転に向かっており年金制度が立ち行かなくなる可能性は限りなく低くなった>

政府は2024年7月3日、5年に1度実施する公的年金の財政検証結果を公表した。高齢者の就業が増えて保険料収入が増加したことや、年金減額制度(マクロ経済スライド)が本格的に導入されたことによって、年金財政は好転に向かっている。

現状レベルの経済状態が続いた場合でも、政府が目標としてきた所得代替率50%の維持が可能であることが明らかとなった。分かりやすく言うと、公的年金制度が立ち行かなくなる可能性は限りなく低くなったということであり、国民は制度の破綻について心配する必要はない。


だが、制度が維持できることと、私たち国民が十分な額の年金をもらえることは必ずしも一致しないので、この点については注意が必要である。年金給付額は毎年、少しずつ減額される見通しであり、多くの人が、高齢になってからも働かざるを得なくなるだろう。

日本の公的年金は賦課方式となっており、現役世代から徴収する保険料で高齢者の年金を賄う仕組みになっている。このため高齢者の割合が増加すると、年金額を維持するため、現役世代からより多くの保険料を徴収する必要に迫られる。

過去30年間は、現役世代の保険料負担を増やす(つまり収入を増やす)という形で対処してきたが、それも限界に達しており、政府が選択したのは、高齢者に給付する年金の額を減らす措置である。

約30年間は年金が減り続けて給付額2割減に

年金を減額する仕組みはマクロ経済スライドと呼ばれ、このところ政府は毎年、この制度を発動しており、年金額は毎年少しずつ減っている。減額制度の効果は大きく、年金財政は急速に改善に向かっており、前述のように、制度が立ち行かなくなる可能性は限りなく低くなった。

だがマクロ経済スライドが終了するまでの約30年間は、年金が減り続けるので、単純計算で考えると、今、40代、50代の人が年金をもらう頃には、現在の貨幣価値で2割ほど給付額が少なくなる。

かつて40代で400万円台の年収があったサラリーマンは、現在、月当たり約15万円の年金をもらえているが、今、40代で同程度の年収があっても、実際に年金をもらう頃には、これが12万円程度にまで減ってしまう。持ち家がある人は大丈夫だろうが、月12万円で賃貸生活はかなり厳しいと言わざるを得ない。

40代、50代が高齢者になる頃には、厳しい老後生活が待っている一方、現在、突出して高い人口割合を占める団塊世代の多くが鬼籍に入る。その後は人口構成が劇的に改善するので、30歳以下の若者が年金をもらう頃には、むしろ年金額は増えている可能性が高い。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米・イラン協議「主要な合意」、23日も継続とトラン

ワールド

トランプ氏、空港に州兵配備検討も 混乱拡大受けIC

ビジネス

米建設支出、1月は前月比0.3%減 民間部門が低迷

ビジネス

ユーロ圏消費者信頼感指数、3月は-16.3 前月か
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 2
    「胸元を強調しすぎ...」 米セレブ、「目のやり場に困る」黒レースのドレス...豊胸を疑う声も
  • 3
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 4
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 5
    スウェーデン次期女王ヴィクトリア皇太子、陸軍訓練…
  • 6
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記…
  • 7
    「筋力の正体」は筋肉ではない...ストロングマンが語…
  • 8
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 9
    100年の時を経て「週40時間労働」が再び労働運動の争…
  • 10
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story