コラム

民主主義先進国、イギリスの落日

2022年10月25日(火)15時10分

アメリカの共和党は、生活に困窮している民主党支持者を自分に引き付けようとし、英保守党は北部の労働党支持者を公共投資の大盤振る舞いなどで引き付ける。それはアメリカでのドナルド・トランプ、イギリスでのボリス・ジョンソンなど、野心家のポピュリストをはびこらせる温床となる。そして保守党内は緊縮財政派と分配拡大派に分裂して、政策形成を麻痺させる。

「産業革命逆回し」の現代社会では、政党は大企業の正社員やIT・AI産業関係者など「持てる者」と、それ以外の「持たざる者」の2つに仕分けしてくれたほうが分かりやすく、政権は安定するだろう。いや、それでは数の多い「持たざる者」の政党が万年与党になってしまう、政権交代があり得るという緊張感があったほうがいいと言うなら、今のままでもいいが。

なお、イギリスの民主主義を上から目線で論ずる権利は、われわれにはまだない。西欧には近代民主主義の基盤をなす個人の権利の重視、合理主義、法治主義が根強く残っているが、日本や韓国では、「法より情緒」という伝統が根強く残っている。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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