コラム

関係改善のその先にある日中関係

2015年12月29日(火)20時00分

 しかし認識するべきことは、急速な経済成長によって国力が増大したことによって、中国は地域のパワーバランスの変化の担い手となり、国際社会における存在感を高めているということである。この存在感の向上は、中国が「打ち上げた」構想への求心力を与え、実現に向けた影響力をも高めつつある。中国の構想力を過大評価するべきではないが、過小評価するべきでもない。

 今日の日中関係において、日本の平和と安定、そして繁栄のために、中国との間の領土や歴史認識をめぐる問題の解決は重要である。しかし日中関係に存在する課題はそれだけではない。その先にある課題に目を向けよう。

 日本社会はアジア太平洋地域秩序に対する構想力と発信力を高めつつある中国と向き合っている。これからの日中関係は、「地域と国際秩序のあり方をめぐる構想の協力と競争の関係」となることを、あらためて認識する必要がある。

プロフィール

加茂具樹

慶應義塾大学 総合政策学部教授
1972年生まれ。博士(政策・メディア)。専門は現代中国政治、比較政治学。2015年より現職。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター客員研究員を兼任。國立台湾師範大学政治学研究所訪問研究員、カリフォルニア大学バークレー校東アジア研究所中国研究センター訪問研究員、國立政治大学国際事務学院客員准教授を歴任。著書に『現代中国政治と人民代表大会』(単著、慶應義塾大学出版会)、『党国体制の現在―変容する社会と中国共産党の適応』(編著、慶應義塾大学出版会)、『中国 改革開放への転換: 「一九七八年」を越えて』(編著、慶應義塾大学出版会)、『北京コンセンサス:中国流が世界を動かす?』(共訳、岩波書店)ほか。

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