コラム

レジ袋有料化の効果はイギリスに聞け

2018年11月06日(火)17時15分

ある商品市場が活気づいた

でもこれは、イギリスに大きな意識変革をもたらしている出来事でもある。レジ袋が無料だったときは、なんとなく使っていいものだとされていた。レジ袋はそんなに悪いものじゃない、そうでなければ取ってくれと置いてあるはずがないだろう、とみんな漠然と思っていた。それに、みんなレジ袋を使っているじゃないか、自分が使って何が悪い?と。

それが今や、レジ袋には「罪悪税」が課されるようになり、たとえわずかな金額でも、人々は「使い捨てプラスチック」の罪をずっと強く意識するようになっている。大量のビニール袋が海に流れ着き、環境を破壊していることも周知されるようになった。

周囲の圧力できまりが悪いのか、レジ袋を取りながら自己弁護している人の姿も見られる。「いつもはエコバッグを持ってくるんだけど今日はスーパーに来るつもりじゃなかったから......」

もう1つ僕が予想していなかったのが、レジ袋税によって丈夫で安いエコバッグ(通常1ポンド前後だ)のビジネスがこんなにも活気づいたこと。小売り大手はエコバッグが広告の一手段であるかのようにエコバッグ競争を繰り広げている。買い物客はエコバッグを街で持ち歩き、ライバル店にも持参する。そして同じエコバッグを何年も使い続ける。

オレンジ色のセインズベリーのバッグ(キュートなゾウのイラスト入り)は特に目立つけれど、青色のテスコのバッグ(テントウムシのイラスト入り)には熱烈なファンがついている。モリソンズのバッグはデザインの良さと耐久性に定評があるが、中流層はマークス&スペンサーのバッグのほうを好む(「おしゃれ」な店だから)。エコバッグのデザインはちょくちょく変わる。今日僕は、ロンドン・パラリンピックのロゴ入りのクールなバッグを持った人を見かけた。ずっとほしいと思っていたバッグ(ミツバチのイラスト入りのウィルコのバッグだ)がもう手に入らないと分かって、動揺してしまったこともある。

ここ数年、こうしたエコバッグは金銭感覚のしっかりした旅行者たちの間でも人気になりつつある。だからもし、誰かからイギリス土産に素敵なエコバッグをもらったら、このレジ袋税に感謝してほしい。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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