コラム

税制論議をゆがめる安倍政権の「拝外」主義

2016年03月25日(金)17時00分

 さて、あくまでも個人の主張としての消費税増税について、各教授がどのようにお考えなのか。英語原文が確認できればよかったのですが、ワタクシには現状その手立てがありません。そこで会合と記者会見の内容を伝える記事から探ってみます。

 通信社発の英文記事を見ると、実際の発言として、スティグリッツ教授 "A consumption tax increase now is going in the wrong direction,(いま消費増税をすれば誤った方向に進むことになる)"、クルーグマン教授 "I would call for not hiking the consumption tax,(消費税増税しないよう要請したいと思う)" の引用が確認できます。これまでの論調や論文内容から察しても、お二人は消費税増税反対で間違いないでしょう。

 そんな二人に対して、消費税増税に前向きと報道されたジョルゲンソン教授は一般論として持論である "It's very important to stimulate productivity that we shift the burden of taxation from investment to consumption,(投資から消費へと課税負担をシフトさせることで生産性を刺激することが必要)" とした上で、来年4月の増税については "too soon(時期尚早)" とし、時間をかけ慎重に検討するよう求めているとのこと。つまり、国内報道に見られるような来年4月の10%の消費税増税について海外の権威は反対2、賛成1に分かれたのではなく、お三方とも反対というのが実情と言えるでしょう。

 誰が言うかよりも何を言うか(言ったか)――それを一般国民が知る手がかりとして、そしてその理解や議論を深めるためにも、一次情報の公表と有用性をあらためて指摘しておきたいと思います。

プロフィール

岩本沙弓

経済評論家。大阪経済大学経営学部客員教授。 為替・国際金融関連の執筆・講演活動の他、国内外の金融機関勤務の経験を生かし、参議院、学術講演会、政党関連の勉強会、新聞社主催の講演会等にて、国際金融市場における日本の立場を中心に解説。 主な著作に『新・マネー敗戦』(文春新書)他。

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