コラム

賃金格差の解消こそが女性の雇用を後押しする

2015年08月03日(月)16時40分

 約束の意味で使用されている単語pledge(誓約する)は単なる約束を意味するpromiseと違いvow, oath, swearとともに聖書に由来する単語です。より公に、固い決意を持ってと受け止められる場合が多い単語です。虎の威を借る狐でILO条約111号など批准しなくても大丈夫と高をくくっているのかもしれませんが、いつ梯子が外されてもおかしくない状況です。気が付けば日本だけが国際社会で孤立となるやもしれません。

 つまるところ、国際労働基準では女性、非正規も含め、労働者はその権利が確保されていますし、あるいは確保される方向で進んでいるということです。対して、いつまでたっても労働者の権利問題に消極的なのが日本ということになります。

 仕事の内容そのものに厳しい(=クオリティの高さを求めがゆえに要求が強まる)のと、雇用環境が厳しい・劣悪なのは、これまた別問題。労働条件の話はともすれば倫理だけに偏するきらいがありますが、経済の視点から是正が必要なこと、この度の労働者派遣法改正案もそれに逆行しているとの現状認識が必要でしょう。

 質の高い、生産性の高い労働を生み出すためにも、低い方への標準化ではなく、国際労働基準に向け最低限の労働環境を整えることでボトムアップを計るのは当然で、そうした国際的なコンセンサスに早く日本も追い付いてもらいたいものです。内需拡大、真の経済力の増強のために、協調して国際社会政策を遂行するために。そして、すべての人が労働を通じて輝くという理想になるべく近づくために。

<参考文献:深澤敦・立命館大学産業社会学部教授・講義録「国際社会政策論:国際社会政策(ILO)と日本」>

プロフィール

岩本沙弓

経済評論家。大阪経済大学経営学部客員教授。 為替・国際金融関連の執筆・講演活動の他、国内外の金融機関勤務の経験を生かし、参議院、学術講演会、政党関連の勉強会、新聞社主催の講演会等にて、国際金融市場における日本の立場を中心に解説。 主な著作に『新・マネー敗戦』(文春新書)他。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

凍結資産活用は「窃盗」、どの国にも西側制裁リスクと

ワールド

西側の安全保障モデル崩壊、プーチン氏「協力して新シ

ビジネス

中国新規銀行融資、4月は予想を大幅に下回る M2伸

ワールド

仏総選挙、極右勝利なら金融危機も 財務相が警告
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名が海水浴中に手足を失う重症【衝撃現場の動画付き】

  • 3

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 4

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 5

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    国立新美術館『CLAMP展』 入場チケット5組10名様プレ…

  • 8

    ジブリの魔法はロンドンでも健在、舞台版『千と千尋…

  • 9

    「これが野生だ...」ワニがサメを捕食...カメラがと…

  • 10

    長距離ドローンがロシア奥深くに「退避」していたSU-…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 6

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 7

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 8

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 9

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 10

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開する…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story