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韓国大統領、米貿易協定巡り警告 「97年金融危機再来の恐れ」

2025年09月22日(月)09時42分

韓国の李在明大統領は停滞している米国との貿易交渉を巡り、安全策なしに米国の要求を受け入れれば、韓国経済は1997年の通貨・金融危機に匹敵する危機に陥る恐れがあるとの見解を示した。9月19日、ソウルで撮影(2025年 ロイター/Kim Hong-Ji)

Josh Smith Hyunjoo Jin Heejung Jung

[ソウル 22日 ロイター] - 韓国の李在明大統領は停滞している米国との貿易交渉を巡り、安全策なしに米国の要求を受け入れれば、韓国経済は1997年の通貨・金融危機に匹敵する危機に陥る恐れがあるとの見解を示した。

米韓は7月に貿易協定に大枠合意し、韓国が3500億ドルの対米投資を行う代わりに、米国は韓国製品に対する関税を引き下げるとされた。しかし李氏は投資の取り扱いを巡る相違のため、合意内容の文書化が遅れていると述べた。

19日に行われたインタビューで、「米国の要求通りに3500億ドルを引き出し、全額を米国内に現金で投資することになった場合、通貨スワップがなければ韓国は97年の金融危機と同じような状況に直面するだろう」と警告した。

韓国は投資がウォン市場に与える影響を衝撃を和らげる目的で米国との通貨スワップ協定を提案している。李氏は米国がこれに同意する見通しや、それが貿易協定を進めるのに十分かどうかについては明言を避けた。

韓国の状況は7月に米国と貿易協定を締結した日本とは異なるとの認識を示し、日本は韓国の2倍以上の外貨準備と円という国際通貨を保有し、米国と通貨スワップ協定を結んでいると指摘した。

また対米投資プロジェクトについて、「商業的合理性を保証する詳細な合意に達することが現時点で中心的な課題だが、同時に最大の障害でもある」と述べた。事務レベル協議で提示された提案は商業的実現可能性を担保するものではなく、溝を埋めるのは容易でないと語った。

貿易協定から離脱する可能性を問われると、李氏は「血盟である同盟国同士であれば、最低限の合理性は維持できると信じている」と答えた。交渉が来年まで延びる可能性があるかとの質問に対しては「この不安定な状況をできるだけ早く終わらせるべきだ」と述べた。

<北朝鮮・中国・ロシアとの緊張>

李政権は北朝鮮との緊張緩和を目指してきたが、北朝鮮は応じる姿勢を示していない。李氏は当面の南北対話の見通しについて楽観していないと述べた。

米朝間の交渉の状況については詳細な情報を持っていないとし、「両国が具体的な対話を行っているわけではない、というのがわれわれの判断だ」と語った。

北朝鮮とロシアの軍事協力が韓国の安全保障にとって重大な脅威だという尹錫悦前大統領の見解を共有すると述べた。しかしこの問題は単純な対応では不十分であり、対話と協調を通じて解決すべきだとの考えも示した。

社会主義陣営と資本主義・民主主義陣営との間の対立が激化する中、韓国の地理的条件により、同国が対立の最前線に立たされる恐れがあるとの見方を示した。

韓国・日本・米国が協力を深める一方で中国・ロシア・北朝鮮は連携を強めており、対立と緊張がエスカレートしていると指摘。「これは韓国にとって極めて危険な状況だ。高まる軍事的緊張から抜け出す道を見出し、平和的共存の道を探らねばならない」と強調した。

ロイター
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