マクロスコープ:インド首相来日へ、日系企業は「玄人向けの国」でどう稼ぐ

8月28日、インドのモディ首相(写真)が29日に来日し、石破茂首相との首脳会談や宮城県訪問を予定している。写真は7月、英アイルズベリー近郊で代表撮影(2025年 ロイター)
Tamiyuki Kihara
[東京 28日 ロイター] - インドのモディ首相が29日に来日し、石破茂首相との首脳会談や宮城県訪問を予定している。両国政府は幅広い分野での関係深化を目指す考えだ。最新の統計によると、日印関係は経済面、交流面ともに好調。一方で、インドは新規進出を試みる企業にとっては一筋縄ではいかない「玄人向けの国」とも言われる。現状と展望を探る。
<貿易には活気>
日印関係の基礎となるのは、インド人の親日度だ。日本政府観光局の資料によると「日本を信頼できる」と回答した割合は96%、両国関係が友好だとした割合も97%に達している。歴史的な友好関係に加え、日本の経済力や技術力、自然の豊かさへの好感が背景にあるとの調査もある。
実際、インドの訪日客数は新型コロナ禍の不調から完全に脱し右肩上がりだ。今年1―7月は18万9400人と、前年比38.4%増となった。
貿易も活気を帯びる。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、24年のインドの対日輸出は58億3100万ドル(前年比14.7%増)、輸入は188億9500万ドル(同7.9%増)だった。輸出をけん引したのは自動車や部品、輸入は機械製品や化学品が多数を占めた。
<「ビジネスがしにくい」との声も>
一方で、インドに進出する企業数は近年、横ばい傾向だという。ジェトロの資料によれば、20年に1455社だった在インド日系企業は24年10月時点で1434社と微減。拠点数が4948カ所から5205カ所に増えていることを考えると、すでに進出している「玄人」企業が規模を拡大する反面、新規の進出が撤退する企業数に追い付いていない状況が見て取れる。
経済産業省の担当者は「現地の税制手続きが煩雑なことや裁判になった場合の係争費用がかさむことなど、東南アジアの国々と比べるとビジネスがしにくいところもある」と認める。政府としても進出企業のサポートに注力する考えだ。
<インドで稼ぐカギは>
こうした状況下で日系企業が「インドで稼ぐ」ためのカギの一つは、インドから第三国への輸出拡大だ。ジェトロの24年度調査では在インド日系企業(回答277社)の売上高に占める輸出の割合は平均18.9%で、ラオスの61.8%、中国の32.0%と比較しても低い水準だった。まだまだ伸び代がある分野と見られている。
今回のモディ首相の訪日に合わせ、両政府は民間投資の更なる強化で合意する方針だ。NHKは日本政府がインドに対し、今後10年間で10兆円の民間投資を行う目標を打ち出す方針だと報じ、宮城県で半導体製造装置メーカーを視察する予定だとも伝えている。
ジェトロ調査部アジア大洋州課リサーチ・マネージャーの古屋礼子氏は「インドの世界におけるプレゼンスは高まっている。これからはインドで作り、他国に輸出する時代。日系企業にとって今後、より重要なパートナーになっていくはずだ」と話す。
(鬼原民幸 編集:橋本浩)
*見出しの体裁を直して再送します。