アングル:AI学習巡る著作権訴訟、アンソロピックの和解が波紋

対話型生成AI(人工知能)「クロード(Claude)」を開発した米アンソロピックがAI学習で著作権を侵害したとして米作家グループが起こした集団訴訟で、アンソロピックが今週和解に応じた。写真は携帯画面に表示される同社のロゴ。2024年5月、ボスニア・ヘルツェゴビナのゼニカ市で撮影(2025年 ロイター/Dado Ruvic)
Blake Brittain
[27日 ロイター] - 対話型生成AI(人工知能)「クロード(Claude)」を開発した米アンソロピックがAI学習で著作権を侵害したとして米作家グループが起こした集団訴訟で、アンソロピックが今週和解に応じた。生成AIの学習を巡る著作権侵害集団訴訟で初の和解となる。法律専門家からは驚きの声とともに、オープンAIやマイクロソフト、メタ・プラットフォームズ などのAI関連企業を相手取った著作権訴訟に複雑な影響を与える可能性があるとの指摘が聞かれた。
アンソロピックと作家グループは26日、和解で合意したと同地裁に伝えた。和解案を承認する権限を持つウィリアム・アルサップ裁判官は、9月5日までに詳細を提出するように命じた。
<特殊ケース>
アマゾンが出資しているアンソロピックは、「クロード」の学習のために歌詞を不正利用されたとしてユニバーサル・ミュージック・グループからも提訴されている。
作家グループの集団訴訟では、米西部サンフランシスコ連邦地裁がアンソロピックが数百万冊の海賊版書籍のコピーを保管し、著作権を侵害したと認定。損害賠償額を決めるための審理が12月に予定されていた。
コーネル大法科大学院のジェームズ・グリメルマン教授は、アンソロピックが「特殊な状況」に置かれていたとし、同社にとって最悪のシナリオでは著作権侵害によって最大1兆ドルの損害賠償の支払いを迫られた可能性があったと指摘した。同氏は「この和解が他の訴訟の判例となる可能性はあるが、あくまでも詳細に左右される」と語った。
<公正利用の原則>
原告の作家グループは、「クロード」が人間の指示に応答できるように、無断かつ無償で数百万冊もの海賊版書籍を使ったと主張。アンソロピックは、著作権訴訟を起こされている他のAI企業と同じように、「フェアユース(公正利用)」の原則に基づいた自社の行為は合法だと反論していた。
フェアユースの原則は、場合によっては著作権者の許可なく著作物を利用することを認めるもので、テクノロジー企業にとって重要な法的防衛策となっている。サンフランシスコ連邦地裁は、アンソロピックがAI学習に著者の許可なく書籍を利用したことはフェアユースに当たると認定。一方、必ずしもAI学習に使われない「中央ライブラリ」に海賊版書籍をコピーし、保管していたことはフェアユースには当たらないとして著作権侵害があったとしていた。
デューク大のクリス・ブッカフスコ教授(法学)は、フェアユースが認定されたことでアンソロピックは「相当に強固な立場」に立ったはずで、和解は驚きと述べた。その上で「(アンソロピックの)和解への意欲を見て、全米の原告側弁護士たちの目にドル記号が点滅している様子が想像できる」と話した。