石油輸送「影の船団」、欧米制裁強化で増船ペース鈍化=関係者

8月13日、ロシアやベネズエラ、イランが欧米の制裁を逃れて石油を輸送するために利用する「影の船団」は、今年に入って増加ペースが過去数年の数百隻から数十隻へと鈍っている。2022年3月撮影(2025年 ロイター/Dado Ruvic)
Jonathan Saul
[ロンドン 13日 ロイター] - ロシアやベネズエラ、イランが欧米の制裁を逃れて石油を輸送するために利用する「影の船団」は、今年に入って増加ペースが過去数年の数百隻から数十隻へと鈍っている。欧米の対ロシア制裁が強化され、条件に合うタンカーの確保が難しくなったためだ。複数の船舶関係者が明らかにした。
影の船団は2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、特にロシアが戦費調達目的で石油を輸出するために活発に利用している。
ロイズ・リスト・インテリジェンスや船舶仲介会社ギブソンなどを含めた業界専門家の見積もりによると、現在の影の船団の総数は1200-1600隻と、世界全体のタンカー数の2割に相当する。
ウクライナの戦争が始まる前の数百隻に比べて規模が拡大したが、前年比ベースでは伸びが減速傾向にある。制裁が厳しくなり、中古船舶の売却についても当局による監視が強まっているという。
英国の海事サイバー防衛やリスク情報を手がけるドライアド・グローバルのアナリスト、アンナ・ジャコメッロ氏は7月のリポートで「規制の穴がふさがれつつある」と言及した。
ただ海運会社などに石油制裁順守について助言している法律事務所リード・スミスの制裁問題パートナー、リー・ハンソン氏は「影の船団は非常に(収益面の)妙味が大きいので引き続き参入があるかもしれない」と予想。大手企業は敬遠するだろうから、海運の経験が乏しい向きだけが主要な船舶保険のカバーがない老朽船でリスクの高いこうした事業に入ってくるだろうと説明した。