新興政党の参政党、日本の政治に揺さぶり 外国人受け入れを争点化

外国人の受け入れや男女共同参画に批判的な立場を取り、「日本人ファースト」を掲げる右派の新興政党が、20日投開票の参議院選挙を前に支持を拡大している。写真は党首討論に臨んだ各党の党首。7月2日、東京の日本記者クラブで撮影(2025年 代表撮影)
Tim Kelly Takaya Yamaguchi John Geddie
[東京 17日 ロイター] - 外国人の受け入れや男女共同参画に批判的な立場を取り、「日本人ファースト」を掲げる右派の新興政党が、20日投開票の参議院選挙を前に支持を拡大している。メディアの世論調査によると、今回争う125議席のうち、10─15を獲得する勢いをみせる。同党の急速な台頭は、この国も他の多くの西側民主主義国で見られる政治や社会の分断と無縁ではない可能性を示唆している。
「外国人の問題に触れると、差別だとバッシングがくる」。15日に実施したロイターとのインタビューで、神谷宗幣代表(47)はこう語った。
同時に「逆に言えば、参政党が叩かれながらも支持を伸ばしているので、自民党や公明党も支持を確保するために言わざるを得なくなった」と、選挙戦を通して感じているという。外国人問題を巡り「新たな論点を生み出したということは言える」と、同氏は振り返る。
政治アナリストらによると、神谷代表のメッセージは経済と通貨の低迷に不満を抱く有権者の心をつかんでいる。記録的な数の外国人観光客が日本を訪れ、物価の上昇に拍車をかけている状況も背景にある。
日本社会は急速に高齢化が進む一方、在留外国人が昨年約380万人と過去最多を更新した。それでも総人口の3%にすぎず、米国や欧州諸国と比較すると極めて低い。
神谷氏は食品スーパーの店長や英語と世界史の高校講師、大阪府吹田市の市議会議員などを経て、2020年に参政党を立ち上げた。トランプ米大統領の政策にたびたび言及するが、ドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」や英国の「改革党」など、よく比較される右派のポピュリスト政党と同じ道を歩めるかは未知数だ。
その要素は揃っていると、日本の右翼政治を研究する神田外語大学のジェフリー・ホール講師は指摘する。インターネット空間の支持基盤、若い男性への訴求力、自国の固有の文化を移民が侵食するなどの訴えが共通しているという。
「これまで公然と語ることがタブーとされていた反外国人感情が、今や表面化している」とホール氏は話す。
<政府も右傾化>
外国人に対する政策が選挙の主要な争点として浮上する中、政府は15日、「外国人との秩序ある共生社会推進室」を内閣官房に設置した。石破首相は発足式で、外国人労働者を受け入れる必要性に言及しつつ、「一部の外国人による犯罪や迷惑行為、各種制度の不適切な利用など、国民のみなさんが不安や不公平を感じる状況も生じている」と述べた。
メディアの世論調査によると、参院選で自公は過半数を失う可能性が高まっている。衆議院でも少数与党の石破政権は、政策を通すために他党との連立を拡大するか、取引が必要になる可能性があると政治アナリストらは指摘する。
22年の参院選で参政党初の国会議員として当選し、「天皇に側室を」とかつて発言して物議を醸した神谷氏は、以前よりも主張を和らげようとしている。例えば、党の選挙公約には減税と児童手当の拡充が含まれている。他の野党も掲げる政策で、日本の財政健全性に対する金融市場の懸念を招く要因となっている。
日本の安定した政治の中で、小規模な右派政党は足場を築くのに苦労してきた。しかし、参政党はインターネット空間で支持を集めており、ユーチューブのチャンネル登録者は40万人以上。自民党の3倍に当たり、どの政党よりも多い。
ただ、米国や欧州の右派政党と同様、支持層は20─30代の男性に大きく偏っている。神谷代表は、東京選挙区で歌手のさや氏など女性候補を擁立して弱点の克服を図っている。
選挙戦の序盤、神谷代表は男女共同参画について、女性の就労を促進し出産を妨げるとして「間違いだった」と発言。批判を浴びた。
「暑苦しい男だからですかね」。神谷氏は、なぜ同党が男性により訴求するのかとの問いに、自嘲気味にこう語る。
参院選が終わった段階で「(自民、公明両党と)連立を組むことはまったく考えていない」と同氏は言う。「将来的に参政党が40なり50議席をとったときに連立を組んで与党に入ることも目指したいが、今は、まだ小さな党」。
インタビューでは「きちっと足場を固め、責任の持てる状態を作ってから、連立に入っていくということを考えていきたい」との抱負も語った。