アングル:米資産「トリプル安」、20年国債入札低調で財政悪化懸念浮き彫りに

米財務省が5月21日に実施した160億ドルの20年国債入札は低調な結果となり、国債利回り上昇(価格下落)や株安、ドル売りという米国資産の「トリプル安」をもたらした。2018年2月撮影のイメージ写真(2025年 ロイター/Dado Ruvic/Illustration)
Karen Brettell
[21日 ロイター] - 米財務省が21日に実施した160億ドルの20年国債入札は低調な結果となり、国債利回り上昇(価格下落)や株安、ドル売りという米国資産の「トリプル安」をもたらした。与党共和党が成立を目指している包括的な歳出歳入法案により、米国財政が一段と悪化するとの懸念が投資家の間に広がっているためだ。
16日にはムーディーズが米国のソブリン格付けを引き下げ、これで米国を最上位格付けとする主要格付け会社はなくなった。
20年国債入札は、最高落札利回りが5.047%と、前回から約1ベーシスポイント(bp)上昇。各国政府や資産運用会社、保険会社を含む間接入札者の落札比率は69%と平均より高く、外国人投資家の需要の底堅さは示されたが、全体の応札倍率は過去平均の2.46倍をやや下回り、2月以来の低水準にとどまった。
これを受け、米株式主要3指数は4月21日以降で最大の下げを記録し、米国債の指標となる10年国債利回りは一時4.607%と、2月13日以来の高さに跳ね上がった。20年国債利回り自体も5.127%と2023年11月以降で最も高くなった。
ミシュラー・ファイナンシャル・グループのマネジングディレクター、トム・ディガロマ氏は「昔から引き継がれてきた財政赤字問題が解消されそうになく、過剰な債務が存在する。市場は今、米政府と対決しながら、わが国がこの赤字を縮小できるかどうかを見極めようとしている」と指摘した。
ジェフリーズのチーフ米国エコノミスト、トーマス・シモンズ氏は、今回の20年国債入札は「壊滅的というには程遠い」ものの、長期ゾーンが売られる流れがすぐに反転しそうにないことを示したと説明する。
ペン・ミューチュアル・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジョージ・チポロッニ氏は「(長期債)利回りが5%でまた低調な入札に終わったことは、市場参加者が米経済(の実力)について好感触を持っている兆しとは言い難い」と述べ、財政赤字に関する不安が漂っているとの見方を示した。
<赤字拡大加速の不安>
投資家の不安は、大型減税を含む歳出歳入法案が財政赤字の拡大ペースを以前の想定よりも加速させるのではないかという点にある。
ドイツ銀行のFXアナリスト、ジョージ・サラベロス氏は20年国債入札後に公表したリポートで「現在の予算決議を信頼可能な引き締め的政策をもたらすように急激な修正をするか、外国人投資家が十分割安とみなす水準まで米国債の非ドル建て価格が大きく下がるか、どちらかにならざるを得ない」と分析した。
ジャニー・モンゴメリー・スコットのチーフ債券ストラテジスト、ギー・ルバ氏は「最終的に米国の金利市場は供給よりも経済環境に支配されると信じているので、利回りは今年経済状況が悪化するとともに低下しそうだ」とみているが、当面は米国債を買い向かうタイミングではないと付け加えた。
米財務省は4月、国債入札規模を少なくとも数四半期は維持する見込みだと表明した。ただ複数のアナリストは、拡大を続ける財政赤字穴埋めのため、長期国債の入札規模はある時点で引き上げる必要が出てくるはずで、来年初めがその時期となる公算が最も大きいと想定している。
20年国債の発行は1986年以降停止していた後、2020年に再開された。生命保険会社や年金基金などには期間10年や30年の国債の方が人気で、20年国債は相対的に需要が少ない傾向がある。