ニュース速報
ビジネス

カカオ豆取引業者、デリバティブで10億ドル超の損失に直面=関係筋

2024年07月16日(火)14時04分

カカオ豆取引を手がける商社は、主要生産国ガーナからの出荷が今年減少したことを受け、デリバティブ取引で少なくとも10億ドルの損失に直面している。写真はガーナで19年撮影。(2024年 ロイター/Ange Aboa/File Photo)

Maytaal Angel Maxwell Akalaare Adombila

[ロンドン/アクラ 15日 ロイター] - カカオ豆取引を手がける商社は、主要生産国ガーナからの出荷が今年減少したことを受け、デリバティブ取引で少なくとも10億ドルの損失に直面している。6人の業界関係者がロイターに語った。

カカオ豆価格が上昇し、商社は売り持ちの解消を余儀なくされているという。

カカオ豆の国際価格は今年に入り高騰している。世界第2位の生産国であるガーナで天候不順や病害、密輸、金の違法採掘の影響で生産と供給が減少しているためだ。

5人の関係者がロイターに先月語ったところによると、カカオ豆の売却を全面的に管理しているガーナの当局は、不作のため今シーズンに予定していた35万トン分の受け渡しを遅らせる意向だ。これは当局が先渡し契約で売却したカカオ豆の半分近くに相当する。

35万トン分の受け渡しが遅れれば、商社と処理業者はカカオ豆購入に伴うリスクをヘッジするために購入した先物で1トン当たり約4000ドル、総額約14億ドルもの損失に直面する可能性がある。

カーギルやオラム、バリーカレボーといった商社は、まだチョコレート市場に売却していないカカオ豆の価格をヘッジもしくは確定するために先物市場を利用している。

世界的商社の首席カカオ豆トレーダーは、カカオ豆が「スクリーン上でほとんど取引されなくなっている」と指摘。世界のカカオ豆の現物および先物の市場は、多額の損失と先行き不透明感の結果、停止寸前だと話した。

トレーダーは通常、受け渡しの数カ月前にカカオ豆を購入する先渡し契約を締結する。現物の受け渡しを待つ間、トレーダーは価格が下落した場合のリスクをヘッジする必要があるため、通常は先物市場で売り持ち高を構築する。

だが、価格が上昇する中で現物の受け渡しが遅れれば、トレーダーは売り持ち高の解消を余儀なくされ、この戦略は破綻を来す。

関係者の話では、2024年5月受け渡しのカカオ豆現物を先渡し契約で購入したトレーダーは昨年、24年5月受け渡しの先物を1トン当たり3000ドル程度で売り持ち高を構築したと考えられる。

だが24年4月には価格が上昇する中、これらのトレーダーは24年5月受け渡しの売り持ち高を解消するか、1トン当たり1万1000ドルで先物を買い戻さなければならなくなり、1トン当たり8000ドルの損失に直面した。

トレーダーは依然としてカカオ豆の確保を期待して現物の価格変動をヘッジする必要があるため、25年5月受け渡しの新たな売り持ち高を構築しなければならなくなった。25年5月受け渡しの先物価格は、今年4月時点では1トン当たり7000ドル近辺で推移していた。

これにより、仮にトレーダーが来年5月に1トン当たり3000ドルで現物を受け渡されたとしても、依然として1トン当たり4000ドルの損失に直面することになる。

有力トレーダーの話では、トレーダーはハーシーやモンデリーズといったチュコレート会社への販売価格を引き上げることで、損失の一部を吸収することを試みると考えられる。

一方でチョコレート会社は消費者への価格転嫁が難航しそうだ。消費者は既に、値上げに対応してチョコレートの購入を減らしているためだ。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中